シルエット
商品番号 | tk011803 |
商品名 | JACKET SILHOUETTE T-SHIRTS |
価格 | JACKET SILHOUETTE T-SHIRTS: |
限定数 | 販売終了 |
サイズ | 0/1 |
素材 | JACKET SILHOUETTE T-SHIRTS: |
支払方法 | 先払い |
送料 | |
納期 | JACKET SILHOUETTE T-SHIRTS: |
備考 | この商品は返品不可とさせていただきます。 |
バイヤー | チバ |
明快さの影に
五反田廃屋にて、と記されたインビテーションを頼りに、五反田の繁華街に建つ、とあるビルの地下空間へ。
いつも衝撃的な作品でボクらを魅了してくれる、ANREALAGE(アンリアレイジ)の2010 S/Sのコレクション 「シルエット」。
「シルエット」という名の通り、暗い地下の会場へ足を踏み入れると、大きなライトボックスのような箱が並び、一つ一つの箱には光を受けた服のシルエットだけが浮かび上がっています。
見れば、そこに並んでいるのは、ある意味で典型的な服のシルエット。
ジャケット、セーター、スカート、パンツ、コート...
どれも一目でそれと分かる服のシルエットが浮かび上がるスクリーン。そしてこのスクリーンは扉になっていて、その扉を開けるとそこには...
「シルエット」という名の通り、あまりにも明快なコンセプト。
見る者に迷う隙を与えない、この明快さ。そして、それとは裏腹に、一見真っ黒い影に見えた服の一点一点は、豊かな表情と、多彩な質感で構成されていて...
だから、あえてそこに自らの思考を働かせることなく、分かったつもりになるところでした。いや、なっていました。完全に。
言わばこの作品の輪郭だけを捉えてしまっているのだということに、この時はまだ気付いてもいなかったのです。
ある疑問...
「例えばジャケットのシルエットのTシャツだったら...」
と、小さくプリントアウトしたパターンの図を、自らハサミで切って小さな紙の服を作ってくれる、ANREALAGEのデザイナー森永邦彦さん。
膨大な時間をかけて練り上げてきた、その思考の過程を共有させてもらう、至福の時間。と同時にボクにとっては真剣勝負、緊張の時間です。
実は、コレクションを見た後で浮かんでいた一つの疑問がありました。
ある象徴的な服のシルエットを選び出し、その象徴とは正反対の性格を持つ服を、その影の中から抽出した、今回のコレクション。
フォーマルで堅いイメージのジャケットのシルエットからは、カジュアルで軽やかなTシャツが作られ、ラフで安いイメージのタンクトップのシルエットからは、重厚で高価な皮のブルゾンが。という具合に。
そのときに生じる形の差異、素材感の差は、時に歪を生み、襞となり、緩み、あるいは張り詰め、重なったり、隙間を作ったり、服に思いもかけない新しい表情をもたらします。
そう。ここまでは一目瞭然でした。
コレクションを見た人は誰でも、いや、写真で見ても。
明快に伝わるというだけでなく、おそらく驚きをもって、生み出されたその結果の美しさを楽しむことができるはずです。
でも...
ある服を作るための布を、決められた輪郭の中に収めるというだけならば、極言すればそれは服の作り方ではなく、単にたたみ方だけの問題ということになってしまいます。
そこには、さほど知的な刺激も無いはずで。
森永さんが、その程度の創造性で服を作るわけもなく、
かと言って、今回のコレクションとの明確な違いも言葉にできず...
ぼんやりとした疑問を胸にしたまま、いつものようにANREALAGEのオフィスを訪ねたのでした。
美しく切り込む
糸口すら掴めぬまま、漠然とした疑問の中にいたとき、霧が晴れるきっかけになったのは、森永さんの口から出たこんな一言でした。
「基本的には、置くだけでシルエットの形に戻ります。」
そして、森永さんが出してきてくれたのが、先ほどのTシャツのパターンでした。
平らに置いた状態で、左の図のようになっているTシャツ。
シルエットの黒い影の中に、切り込むようにいくつかの線が入り込み、そしてまた輪郭線へと戻っていきます。
良く見ると、どの線も元の輪郭との調和を崩すことなく、新しい形をその内側に描いています。
この新しく描かれた線によって、シルエットの輪郭は思いもかけない位置で分割されたり、新しい布の重なりを生み出したり...
そして元のシルエットからは想像もできない位置に袖や首が作られて、全く新しい服へと意味も形も変換されてしまうのです。
これが、今回のコレクションを作り上げるために森永さんがしてきたことでした。
すでに意味の固定された象徴的なシルエットに、新しい切込みを入れることで、全く新しい服を作り上げてしまう。しかも、それを美しくやってのける。
元のシルエットからは、ここが袖、ここが裾、ここが襟といった意味が全て剥ぎ取られて、全く関係のない形や、新しい意味が付加されます。
しかし、全てを剥ぎ取られたシルエットも、その輪郭だけは固持しようとするため、新しく作られた形との差によって負荷が生じ、服に思いもかけない表情が生まれるのです。
シルエットの黒い影の中に、新しいキャンバスを見つけた森永さん。そして、そこに何度も何度もドローイングを重ねて生み出された、新しい形。
それが、今回のコレクションなのです。
そして戦略的に
影と言えば、子供の頃はよく、暗がりに浮かぶ影に驚いたり、怯えたりしたものです。
何気ない輪郭の中に、怖ろしい殺人鬼や、怪物の顔を連想したりして。
中の見えない影は、きっとそんな風に想像力をかき立てて、思わぬものへと空想をジャンプさせてしまう力があるのでしょう。
でも、今回森永さんが服のシルエットを見つめたその眼差しは、必ずしもそんな少年のような無垢なだけの眼差しではなかったようです。
多くの場合、服はそのシルエットによって分類されているのではないか?そして、価格も素材もそれに紐付けられて、あらかじめ決められてしまっているのではないか?
ならば、そのシルエットと素材や価格の関係性を断ち切って、再構築してやることで、新しい服のあり方を提示できるかもしれない。
そんな風に考えた森永さん。
だから、シルエットからイメージされる服とは完全に逆のイメージの服を作り、逆の素材を使っているのです。
それは取りも直さず、価格との関係性をも破壊することにつながります。
そして、価格と言えばもう一つ特徴的なこと。
それは、コレクションの服=高くて手が出せない、という関係を打ち壊したい、そして、コレクションの服ほど沢山の人に着てもらいたい、という思いです。
以前から追求されてきたその思いは、今回のコレクションにも引き継がれ、価格の設定がされています。
服の作られるプロセス自体に潜む惰性に突破口を見い出し、服のあり方自体を再構築しながら、それを芸術的な美しさへと昇華させてしまうANREALAGEのクリエイション。
今回のコレクションも、是非多くの方に手に取って、楽しんでいただきたいクオリティーと価格です。
密買東京での取り扱い作品の詳細は、こちらも合わせてご確認ください。
そして、ANREALAGEのホームページでも、今回のコレクションを始め、これまでの全てのコレクションをご覧いただけます。
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