保留される形
商品番号 | tk017303 |
商品名 | LOW PIXEL DRAPE FLOWER ONE PIECE |
価格 | LOW PIXEL DRAPE FLOWER ONE PIECE: |
限定数 | 購入ページにてご確認ください。 |
サイズ | > サイズ表 |
素材 | LOW PIXEL DRAPE FLOWER ONE PIECE: |
支払方法 | 銀行振込・クレジットカード決済(PayPal) |
送料 | 無料 |
納期 | LOW PIXEL DRAPE FLOWER ONE PIECE/LOW PIXEL PRINT PUMPS:2011年8月頃 |
備考 | この商品は返品不可とさせていただきます。 |
バイヤー | チバ |
遅れる形
数年ぶりのランウェイショーだった、前回のコレクション「 」に続いて、ランウェイショーの形で行われた、ANREALAGE(アンリアレイジ)の2011-2012 A/Wコレクション「LOW」。
高まる期待にざわめく会場。
そして暗転。
そこに現れたのは、遠目にも色彩が飛び込んでくる、色鮮やかな柄を身にまとったモデルでした。
長いランウェイを、ゆっくりと近づいてくるその姿。
そして、近づくほどに高まる違和感。
理由は、すでに画像でご覧いただいている通りです。
より滑らかに、より鮮明に、像を結ぶことを待ち構える目と脳の期待は、一歩また一歩とその姿が近づくたび、少しずつ遅延され...
頭の中で保留され続ける完成像。
裏腹に、歩くたび目の前でゆらゆらと揺らめくカクカクのエッジ。それはまるで虚構の世界を眺めているようでした。
新しい模様
例えば、花柄。
今回紹介する中で言うとLOW PIXEL DRAPE FLOWER ONE PIECEや、LOW PIXEL PATCHWORK FLOWER COATに見られるカラフルな模様は、元になる花柄の画像データの解像度を下げたもので作られています。
つまり、元は無数のPIXEL(画素、あるいは...マス目?)の集合体によって作られていた、滑らかな濃淡や、輪郭は、それを表現するPIXELの数を減らすことで、段々と輪郭が荒れ、ザラつき、そしてガクガクと、ガタガタと。
しまいには何だか分からなくなってしまいます。
その一歩手前。
頭の中で元の模様を呼び起こすことのできる、ギリギリの数。それを目指して、試行錯誤が繰り返されました。
そうしてできた模様。
花柄と呼ぶこともできるけれど、新しい幾何学模様とも呼べるこの模様は、そうやって作られているのです。
さらに、この模様を使って作られた服を見ると分かるように、実はこの模様を構成している巨大なPIXELの輪郭線は、服の形の輪郭にもなっています。
例えば、襟や裾、ポケットなどの輪郭に見られる、カクカクとしたラインは、模様を真似ているのではなくて、PIXELの縁を正確に切り取ることで作られているラインなのです。
つまり、服自体の解像度も、この模様と同じ粗さに下げられている、と言えるかもしれません。
新しい形
解像度を下げて作られた服。
元の服に見られた、滑らかな輪郭が失われるとき、そこには新しい形の服が現れます。今までに見たことのない形、輪郭、模様の服。
それが、新しい服を作ることを常に追い求めているANREALAGEが、今回たどり着いた新しい服の作り方です。
では、元の服とは何なのか?
実はANREALAGEの服作りにおいて、服の名前はしばしば戦略的な意味で使われてきました。
今回のコレクションでも、例えば「トレンチコート」というとき、解像度を下げて作られたトレンチコートは、すでに「いわゆる」トレンチコートとは全く別の形でありながらも、依然として元のトレンチコートを指し示している、あるいは、離れて見たときにトレンチコートのように見える、という関係を保つように、意図的に解像度が調整されています。
それは、花柄が花柄でありながら、同時に新しい模様でもあるのと同様です。
そのとき、服の名前、あるいはその服が指し示す服の像と、実際の服の間にできる、ずれ。それは行き来が可能だけれど、まるで真空状態のような隙間。その間で揺らめく存在感が、この服の面白さでもあると言えるでしょう。
大胆なほどにハッキリした、模様、色彩、輪郭とは裏腹に、その存在はまるでゆらゆらと揺らめいているようです。
新しい方法
トレンチコートと言えば、もう一つ。
LOW PIXEL TRENCH COATで見られるPIXELの作り方は、かなりすごいことになっています。
この服の表面に表現されているのは、いわゆるトレンチコートの生地の少し光沢のある、あの感じです。
その陰影を表現するために、実は気の遠くなるような手仕事が施されているのです。
写真で分かるでしょうか?
あるいは、パターンの図面で...
地形図の等高線のようにも見えるこの無数のドットと、折れ曲がる直線。これは全て生地の上に、色の違う生地を重ね合わせることで表現されています。
ギザギザの直線で切り抜かれた、大小さまざまな無数の生地。
裁断はレーザーで正確無比に、機械的に行われていますが、それを地形のように段々に張り合わせていくのは、人の手作業。
この数の細かい生地を、位置を合わせて張っていくのは、想像しただけでも気が遠くなる、というか、想像したくない...
しかも、柄の向きも単純な直角ではなくて、着たときに水平垂直になるように、実は複雑に斜めになっているのです。
他にも、LOW PIXEL PATCHWORK FLOWER COATのようなANREALAGEでは定番のパッチワークも、今回は人間離れした細かさと正確さで作り上げられていて、これも想像しただけで息苦しくなるような作業量です。
実は、この圧倒的な仕事量の手業で作られる狂気の服作りは、ANREALAGEの服作りにおいて、以前から重要な手法の一つでした。
ここ数年、服の作られるプロセス自体の再構築によって作られる、衝撃的な作品の影に姿を潜めていましたが、今回の神がかり的な手業の復活は、これからのANREALAGEの服作りが、さらに新しい次元へと進んでいくことを予感させるものかもしれません。
いずれにしても、次回も驚くべき新しい服作りを目の当たりにすることになるのは、ほぼ間違いないと言えそうです。
そんなANREALAGEのこれまでの作品と、ANREALAGEのホームページはこちらから。
> ボタンでできた服!?
> 乱れ咲き
> ○ △ □ ?
> 凹 凸
> シルエット
> ちょうど良い服
> 見えないカタチ
> リペア魂 × ANREALAGE!!
> 昼の花/夜の花
> ANREALAGEのホームページ