自立する服
商品番号 | tk018703 |
商品名 | BLISTER CHIFFON JACKET |
価格 | BLISTER CHIFFON JACKET: |
限定数 | 購入ページにてご確認ください。 |
サイズ | > サイズ表 |
素材 | BLISTER CHIFFON JACKET: |
支払方法 | 銀行振込・クレジットカード決済(PayPal) |
送料 | 無料 |
納期 | NUDE SHOES:2012年3月頃 |
備考 | この商品は返品不可とさせていただきます。 |
バイヤー | チバ |
ずれと強度
ショーの始まりを告げる鈴の音。
波打つ会場の空気が澄み渡ると、そこに現れたのは白い服を身にまとった数人の人影でした。
優しく、しなやかな体の動きとは裏腹に、その服は表情を変えず、まるで抜け殻のよう。
「SHELL」と名づけられたANREALAGE(アンリアレイジ)の2012 S/Sのコレクションは、彫刻のような、静かな造形の服の登場で幕を開けます。
その名の通り、殻のように。
あらかじめ立体として成型され、自立する形を持つ服から始まった今回のコレクション。
「かたちの殻」という言葉を手がかりに、伸びやかに広がるその創造力は、美しく結晶して、新しい世界を作り、そして触れる人を魅了します。
そんなコレクションについて、今回もデザイナーの森永邦彦さんに話を聞きに行ってみました。
そして、その思考に触れるうち、今回のコレクションの強度となっているのが、「ずれ」あるいは「ギャップ」が作り出す、構造的な強度なのではないかと思うに至ったので、そんな話を少しだけ...
ショーが始まり、登場したのは今シーズンのコレクションを象徴するような4体の服。体の前半分が立体として成型され、体から少し浮き上がった状態になっています。
BLISTER CHIFFON JACKET (¥42,000)
色:WHITE
襟、ボタン、ポケットの膨らみがそのまま立体として表現されたジャケットです。
SHELLの力学
まず登場した、今回のコレクションを象徴する4体の服。
どれも服の形でありながら、慣れ親しんだそれとは、明らかにずれのあるその存在。
それは裸の体や、服を着た体の形に固められた服でした。
服というイメージとは、少し離れたところにある服。
見た目とは裏腹に、とても強い形の服です。
薄い曲面の呼び名である「SHELL」。
それは、卵の殻を想像すれば分かりやすいでしょうか?
平面の状態では薄くてもろく、壊れやすい素材が、曲面になることで強度を得る。そんな構造体の呼び名でもあります。
平面から曲面へと変形することで、その内部に包み込んだ空間が、強さに変わる。つまり位相のずれが強度に変換される、とも言えるその構造は、自立する立体を生み出します。
本来、服は体に寄り添うことで、体の形に合った立体へとその形を変えます。
でも、自立する形を持つ服は、体との間にずれを生じ、体と外界との間に新しい中間領域を作り出します。
服と体の、連続的で親和的な関係は、一度断ち切られ、服と建築との曖昧な領域を行き来しながら、体との新しい関係を結ぶのです。
そこには新しい知覚の可能性が潜んでいる気さえして...
と言うのは、少し大げさですが、この関係性はもう少し追求してみたくなるような、ちょっとスリリングな何かを予感させます。
BLISTER CHIFFON MILITARY VEST (¥44,100)
色:WHITE
軍物のモチーフが軽やかなシフォンの生地で表現されています。
BLISTER CHIFFON RIBBON ONE PIECE (¥46,200)
色:WHITE
リボンが胸元に表現されています。
形の抜け殻
立体として固定された形。
実はその形の選び方にも、SHELLにつながる意図が込められていました。
選ばれたのは、すでに形式化されている形。
それは、Tシャツなどのプリントで度々登場する形でもあります。
例えば、リボンやベスト、アクセサリー、あるいはヌードなど。プリントされた模様として、二次元で描かれている服を、街でも良く目にします。
あるいは、ミリタリー系の服におけるポケット、ジャケットの襟などの形状もまたしかり。
本来は機能を伴ったデザインや形として生まれてきたであろう、これらの要素は、極言すれば、すでに機能を失い、形式だけの存在になっている、とも言うことができそうです。
つまり、中身を失い、輪郭だけが残った、形骸化した形。
形の抜け殻、とも言える存在です。
あるいは、今回登場するニットのような布。
ニットの立体感が表現された、この軽くて薄い布もまた、本来は生地を作り出すためにできるニットの編み目を抜き出して、その凹凸だけを輪郭にしています。
これらの形の抜け殻はまた、見た目との違和感から、思わず触れてみたくなる形。そして触れたときに、見た目とのずれに、驚いてしまうような、不思議な存在になるようにと意図して作られた形なのだと、森永さんは言います。
形とその意味、形と質感や触感。
それを意図的にずらすことで生まれる、新しい存在感もまた、今回の「SHELL」というテーマの下に追求されたものの一つです。
BLISTER PEARL TANK TOP (¥21,000)
色:WHITE/BLACK
SHELL BACK PACK VEST (¥42,000))
色:GRAY/BLACK
パールのネックレスの凹凸が表現されたタンクトップと、リュックとポケットの形に膨らんだベスト。
ずれに潜む、美しさの可能性
今回のコレクションを作り上げるために、使われた技術。
それは、これまで服作りには使われることのなかった、全く新しい方法です。
「ブリスターパック」というパッケージ。
これを作るための技術が、今回のコレクションで用いられました。
でも実はブリスターパックは、特別なものではありません。
むしろ、目にしない日はないといっても良いほど、スーパーもコンビも、ドラッグストアも、ブリスターパックで溢れています。
典型的なのは、プラスチックでできた透明のパッケージ。
商品の形に合わせて成型された、どこにでもあるあのパッケージが、ブリスターパックです。
他にも、錠剤の小さなパッケージからお菓子のトレーまで。
実は、布の成型はできないと言われていたそうで、そこに試行錯誤はあったものの、もともと低コストでパッケージを作るための技術なので、通常の服作りと遜色ないコストで、利用することができていると言います。
もちろん、例えばこの方法で作られたポケットは、ポケットの抜け殻。物を入れる機能は削がれています。
でも、そこにできた空隙は、未だ不確かな存在ながらも、何か新しい可能性を孕んでいるような、予感に満ちた空間です。
新しい服作りの手段は、至る所に転がっている。
そう語る森永さん。
それを求める創意と、それを拾い上げる目があれば、ありふれた技術を援用し、それを少しずらすことで、新しい服を作る方法を生み出すことができる。
これまでも、1つの方法に留まることを決してせず、絶えず新しい方法と、新しい服作りを求めてきたANREALAGE。
圧倒的な手業によって作り上げてきたコレクションや、服作りのプロセス自体を再構築するコレクションを経て、新しい技術へと食指を伸ばし始めた2011 S/Sからの3回のコレクション。
1度たりとも、同じ手法を繰り返すことなく突き進んできた、ANREALAGEの服作りに共通しているのは、手法とその成果との間に、意図的にずれを生じさせること。
それによって、思いがけない美しさと、力を持った服を作りだしていることだと、言うことができるでしょう。
その姿勢は今回も貫かれると同時に、また新しい何かが芽生えたのを確実に感じる今回のコレクションでした。
「とにかく美しい服を作りたかった。」
とも語っていた森永さん。
それが確かに実現されたのを目撃した、今回のコレクションです。
そんなANREALAGEのこれまでの作品は、こちらからご覧いただけます。
> ボタンでできた服!?
> 乱れ咲き
> ○ △ □ ?
> 凹 凸
> シルエット
> ちょうど良い服
> 見えないカタチ
> 保留される形
> リペア魂 × ANREALAGE!!
> 昼の花/夜の花
そして、ANREALAGEのホームページでは、コレクションの他の作品も公開されます。
BLISTER KNIT SATIN ONE PIECE (¥39,900)
色:GRAY/BLUE/BLACK
軽く薄い生地に、ニットの凹凸が模られています。
NUDE SHOES (PVC) (¥44,100)
色:PINK/BLUE/GRAY/GREEN
少し小さな足の形に膨らんだ靴。
NUDE SHOES (¥44,100)
色:WHITE/BLACK/GRAY/BROWN
ブリスターパックで作られた招待状が届きました。