ひとりと、いっさつ
商品番号 | tk021003 |
商品名 | 空想製本屋の仕立て直し |
価格 | セミオーダー:¥25,463(税込) |
限定数 | - |
サイズ | |
素材 | |
支払方法 | 銀行振込・クレジットカード決済(PayPal) |
送料 | |
納期 | セミオーダー:1.5 - 2ヶ月程度 |
備考 | この商品は返品不可とさせていただきます。 |
バイヤー | チバ |
解体から始まる
「本の仕立て直し」。
手製本を仕事にする本間あずささんは、自分の仕事をそう呼んでいます。
その仕事は、依頼者から、思いのたくさん詰まった大切な一冊を預かって、それを完全にバラバラにする作業から始まります。
ページ1枚1枚にまで、きれいに解体された本。
再び糸で綴じ直されるその本は、しかしながら元の姿に修復されるというわけではありません。
依頼者から、その本に込められた気持ちや、思い出などを聞き、それを元に、その本に新しい姿を与えるのが、本間さんの仕事。
そんな「本の仕立て直し」を、密買東京でも紹介します。
コースは2種類。
それぞれ「フルオーダー」と「セミオーダー」という名前で呼ぶことにします。
フルオーダーは、本間さんがいつもやっている仕事をそのままに。
そしてセミオーダーは、密買東京のお客さんのために特別に用意してもらったコースです。
これからも人生を共にしながら、何度でも開きたい特別な一冊には、是非フルオーダーで仕立て直しをしてみてください。
でも、セミオーダーの組み合わせで、大切な一冊が素敵に生まれ変わる姿がイメージできたなら、こちらも選んでもらえたら嬉しいです。
扉の役目
考えてみれば、本というのは不思議なものです。
デジタルデータのように、軽やかに形を変えたりすることはできないし、どうしようもなく物質的で、不器用な存在。
時にズシリと重かったりもする、その存在を手に取るところから、本との関係は始まります。
表紙を開いて、1ページ、また1ページ。
手探りで進むようにページを追ううち、物質としての本はそっとその存在を滲ませていき、いつしか本の中に描かれた世界に迷い込んでいる。
その世界の中で人は喜んだり、悲しんだり、新しい発見に驚いたり、時には自分自身の思いがけない姿と出会ってしまったり。
はじめは、何千、何万と複製された中の1つに過ぎなかった、その一冊に、心動かされ、いつしかそれは世界にたったひとつ、自分だけの特別な存在になってしまうのです。
そんな本にとって、その顔とも言えるのが表紙の部分。
本間さんの仕立て直しによって、全く新しい姿に生まれ変わるのも、この表紙の部分と、その周りが中心です。
それは、本の顔であると同時に、本の中の世界へ通じる扉でもあって。
そして、もうひとつ。
本の表紙には、重要な役割があります。
それは、本を読む間じゅう、ずっと手が触れている部分だということです。
1つのプロダクトとして考えても、特異とも言えるほどの、この時間の長さ、手との関係に注目しているのも、本間さんの仕事の大きな特徴の1つでもあるようです。
実は、手製本という仕事のことは、これまで全く知らなかったのですが、きっと一般にもあまり知られていないのではないかと思います。
手製本自体は、ベルギーやフランスの技術を中心に、かつてヨーロッパの技術が日本にも伝えられて定着し、手がけている人も多くいるようです。
ただ一般的には、装飾を施して工芸作品を作る、というのが多いのだとか。
本間さんも、スイスの製本の学校へ留学したりと、ヨーロッパの製本技術を含め、様々な製本の技法を学んできたそうです。
でも、本間さんが目指しているのは、工芸作品として鑑賞をされる本を作ることではありません。
日々の暮らしに寄り添いながら、日常的に手にとって読まれる本を作ること。それが本間さんの目指す製本の仕事です。
だから、本間さんにとって、その本が手で触れられる存在だということは、とても重要なことなのです。
フルオーダーについて
それでは、実際のコースの内容を。
まずは、本間さんの仕事を理解してもらうためにも、フルオーダーについて説明をするのが良いかと思います。
フルオーダーの場合、最初のステップは、その本に込めた思い、気持ち、思い出などを、本間さんに伝えるところから始まります。
東京の中野にあるアトリエで本間さんに会っていただいて、話をしながら、その本の新しい姿についてイメージを引き出していく、という時間。
ただ、遠方の方など、アトリエを訪ねるのが難しい場合には、電話やメールなどでやり取りをすることもあるそうです。
その後、そのイメージを元に、本間さんがデザイン画を作り、製作費の見積をします。
内容について、お互いに納得ができたところで、正式に製作がスタート。
ちなみに、製作費の目安としては、おおよそこんな感じです。
単行本(200頁)を布装厚表紙に → 25,000円から
文庫本(200頁)を布装厚表紙に → 20,000円から
30頁程度の冊子を布装ソフトカバーに → 5,000円から
全て材料費は別の金額で、一般的には、紙、布、革の順で高くなることが多いそうです。
そして、「から」というのがちょっと心配という方へ。
ものによりますが、目安としては4万円を超えることはほとんど無いと思って良いそうです。
フルオーダーの仕立て直しについては、これまでの作例を載せておきますので、見てみてください。それから、本間さんのサイトでも、「本棚」のコーナーにこれまでの作例がたくさん載っています。
ただ、実はそれを見ていて気になったことがあったのです。
これまでの例を見ていると、詩集や小説から哲学書、歴史や評論まで、本とひとことで言っても内容は様々。毎回それを読み込んで装丁として表現するのは、かなり大変なことなのでは?と。
しかし、そうではありませんでした。
依頼された本は読むし、その本を好きになってしまうことも度々あるとも言う本間さん。
でも、極端に言ってしまえば、本は読まなくてもいいのです。
なぜなら、本間さんが装丁で表現しているのは、その本の内容ではないからです。
依頼者にとって、その本はどんな存在なのか、その本にどんな気持ちや、思い出が込められているのか、それを受け取って、装丁として表現するのが、本間さんの仕事。
つまり、その本と依頼者の間に生まれた物語を表現する。
それが、本間さんの仕立て直しの仕事なのです。
セミオーダーについて
次に、今回本間さんに考えてもらった、密買東京用のセミオーダーの紹介です。
セミオーダーの場合には、装丁の形自体は固定です。
リネン(麻)の生地をベースにした表紙に、表と裏それぞれ縦方向に装飾紙がはめ込まれる、という形。
背表紙側の布が少し幅広いこの形は、ヨーロッパではポピュラーな製本の方法だそうです。
選ぶことができるのは、布の色、装飾紙の模様、見返しの色と、いくつかのオプション。
まず、今回使う装飾紙は、本間さんが自分で作ったもので、手染めの紙です。
この手染めの紙を作る技法は、モノタイプなど、版画のような技法がいくつもあるそうで、留学先の製本学校で学んできた技法なのだとか。
製本が日常の暮らしに溶け込んでいるヨーロッパでは、装丁のために手染めの紙を作ることは、製本家の仕事でもあるのだそうです。
インクやアクリル絵の具などを使って作られるその模様は、色の美しさだけではなくて、微かに凹凸などもあったりして、思わず見入ってしまいます。
そんな装飾紙が14種類。
そして布は7色が選べます。
それぞれの詳しい画像と、組み合わせの例は、こちらのサンプルページで確認してみてください。
> 装飾紙と布のサンプル
それ以外には、表紙のすぐ内側に付ける「見返し」と呼ばれる色紙の部分があり、こちらは25色の中からお好みで選んでいただくか、本間さんにお任せで決めてもらうこと可能です。
基本の形としては、そこに栞と花布という部分がついて完成です。
さらに、オプションとして、いくつかの選択肢も用意してます。
まず、元の本についていたカバー。
これはお好みで本の中に綴じ込むこともできて、無料のオプションです。
そして有料のオプションとして、背表紙に本のタイトルを入れることが可能です。
これは2種類の方法があって、どちらも革に箔押しをしたものを背表紙につけるのですが、1行でシンプルに入れるタイプ(2,000円)と、デザイン性を持たせて貼り付けるタイプ(2,500円)が選べます。
ページ数は、基本料金で300ページぐらいまでの想定で、それを超える場合には追加料金が必要です。
500ページぐらいまでは、100ページごとに630円。
500ページ以上については、別途ご確認ください。
大きさとしては、四六判(188mm×130mm)ぐらいまで。
そして、普通の製本家の人はほとんど手がけないという、文庫本の仕立て直しもしているのも本間さんの特徴の1つで、日々の暮らしの中で大切に読まれる本を作りたいと考える、本間さんらしい部分だと思います。
本の仕立て直しは、自分が出合った大事な一冊や、誰かから贈られた一冊、引き継いだ一冊を仕立て直すのも、もちろん素敵ですが、誰かに贈りたい一冊を仕立て直すのも素敵だと思います。
特にこのセミオーダーはそんなときにピッタリなのかもしれません。
そして、本間さんのホームページでも今までの製作例などを見ることができますので、こちらも合わせて見てみてください。