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偶然の賜物

商品番号tk008603
商品名

シマシマノ呼び継ぎ小茶碗

価格

¥30,000(税込)

限定数

1

サイズ

W87mmxD85mmxH40mm

素材

焼き物、漆

支払方法

銀行振込・クレジットカード決済(PayPal)

送料

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納期

1週間程度

備考

この商品は返品不可とさせていただきます。
写真の色は実物と異なる場合があります。
取り扱い上の注意については以下の文章もご確認ください。

バイヤーチバ

予感

ある日届いた1通の注文メール。
届け先の名前、「金継ぎnico」というのが妙に気になって。

カ・ネ・ツ・ギ??
キ・ン・ツ・ギ??

毎度毎度、自分の無知をこんなにも白日の下にさらして良いのかと、本当に躊躇われますが...

しかし一見しただけでかなり気になるこの文字の組み合わせ。「金継ぎ」という伝統?という雰囲気と、「nico」というかわいらしいネーミング?...かどうかも定かではないけれど、ここにはきっと何かありそうな予感。

そこで...

「商品を配達に伺いつつ、お仕事見せてもらえませんか?」
と、恐る恐るお願いしてみたのです。
キモイかな?とドキドキしたけれど、快諾OKいただきました!

ということで、下町は谷中にある工房へ。

しかし本当に知りませんでした。
金継ぎというお仕事があるんですね。読み方は、すでに皆さんご存知かと思いますが、「キンツギ」が正解でした。

割れたり、ヒビが入ったり、欠けたりした陶磁器を、「漆直し」という、漆を使う伝統的な技法で修理するのがnicoさんのお仕事。

中でも、漆で直した上から金粉で装飾するのが金継ぎ。銀粉で装飾をすると銀継ぎで、それ以外にも呼び継ぎなど、色々な方法があるみたいです。

そして。

さっそく見せてもらった数点のお仕事に、早くも心奪われて、「密買東京で紹介させてください!」と、いきなりお願いの初対面なのでした。

この不思議でかわいい器、なんでしょう?

実は、呼び継ぎという技法で直された、割れた茶碗なのです。

ここも漆で直した部分。ホクロみたいでちょっとチャーミング。

黒いところが漆で接合された部分です。


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直してもらいました!

というわけで、nicoさんに作ってもらった器を紹介しましょう。いや、「直して」もらった、が正しいですね。

nicoさんの直した器は、どれも本当に魅力的。「作品」と呼びたくなってしまうような、美しさやかわいらしさ、繊細さや大胆さに、心揺さぶられてしまうのですが、nicoさんはあくまでも職人として、「修理」をしているのだとか。

なんか、気持ち分かる気がします。
無心になれるというか、そんな感じでしょうか。

今回紹介するのは、呼び継ぎという技法を使って作られた器です。

呼び継ぎというのは、割れたり、欠けたりした器を直すときに、元の器の破片に他の器の破片を合体させてしまう直し方のこと。

今回使っている器は、ベースになる部分は古いものだそうで、桃山時代~江戸初期のものだという志野小茶碗だそうです。

そんな古い小茶碗の欠けている部分に、漆で継がれたのは、なんと、知り合いに頼んでこの形に焼いてもらったという、シマシマの陶片。

年輪を重ねた渋い茶碗、でも小さくてかわいい茶碗に、このシマシマがなんともかわいらしくて、良いアクセントになっています。そして、不思議と合う。

下の方に写真を載せている、かわいい呼び継ぎの器もそうですが、この組合せのセンスがnicoさんの個性ですね。

それから、継ぎ目の漆にも注目して欲しいところ。深い褐色の造形、シャープなエッジと艶やかな質感がたまりません。


シマシマがかわいいアクセントになっています。

桃山と現代の出会い。

ザラリとした桃山の質感。

接合部の漆は大胆でシャープな造形に。


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始まりも偶然に

パリーンっ!
器を割ってしまったときのあの気分は、本当にやり切れないものです。

実は、nicoさんがこの金継ぎの仕事をするようになったきっかけも、大事なお皿を割ってしまったことだったのだとか。

失意に沈んでいたnicoさんが偶然見つけたのが、雑誌に載っていた金継ぎの記事。そこに習いに行ったのが、始まりでした。

今はプロとして、直しを生業にしているnicoさん。

昔から使われている伝統的な技術なので、きっとどこかで修行をしたのだろうと思っていましたが、それは全くしたことがないんだとか。

それには、ある大きな理由があるのです。

冒頭で、漆直しをしたものに金粉で装飾をするのが金継ぎだと書きました。でも、実際には漆ではなくて接着剤でくっつけて、金粉で装飾をした金継ぎが、世の中にはかなりの割合であるそうです。

漆で直すのは時間がかかります。

どんな器でも、だいたい最低3ヶ月ぐらい。漆が乾いて強度が出るまで、じっくり置いてからお客さんに渡すのだそうです。

でも、いったん固まった漆はとても丈夫で、漆器と同じように生活の中で普通に使うことができるようになります。

ただ、電子レンジや冷蔵庫、食器洗浄器や漂白剤が苦手だったり、紫外線に長時間当てないようにとか、凍ってしまうような厳しい環境に置かないなど、若干の気遣いは必要です。

でも、口に入れるものを入れたりする器だから、直すのにも自然の素材を使いたい。だからnicoさんは天然の漆にこだわって、漆の職人さんに教わったり、江戸時代に漆直しされた器を解体して技術を盗んだり、そうやって独学でここまで来たそうです。


割れの繊細で美しい線に、魅了されました。

狙った模様にも見えてしまいます。

こちらも、偶然の生んだ芸術的な線。

そしてときには、かわいらしく。


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みんなでクロコ!

お客さんから持ち込まれた器を直す仕事だけではありません。
nicoさんが手掛けていることがもう一つ。(注1)

それが、自分で漆直しをするためのキットの販売。
その名も「クロコ」!

小さな欠けも大きな欠けも、ヒビにも割れにも対応できる漆直しのセットがクロコ。実際に、nicoさんが使っているのと同じ材料が入っているのも嬉しいですが、たぶんこのクロコのすごいところは、中に入っている132ページ・オールカラーのマニュアルでしょう。

上にも書いたように、漆にこだわったために、人から教わることができず、苦労して独学で手に入れたnicoさんの技術。それがこの1冊に詰まっているのです。

もしかしたら、日本でただ1つの漆直しの専門書かもしれません。

他にも、nicoさんが自ら採ってきて作った道具なども入っていたり。

さらに。
実はnicoさんがこだわっているポイントがもう一つ。
それは、国産の漆を使うことです。

値段の安い中国産などの漆に押されて、窮地に立たされている日本の漆産地。でも、その高い品質と強さにこだわって、nicoさんは国産の、中でも岩手県浄法寺の漆にこだわり、現地まで行って直接生産者から手に入れています。

そんなこだわりの浄法寺産の漆がこのクロコにも使われているのです。

パッケージのデザインは、デザイナーをしているnicoさんのお姉さんが手掛けています。このかわいいパッケージも嬉しいですね。

クロコは密買東京からではなくて、nicoさんのホームページから直接ご購入ください。密買東京では、クロコで漆直しをしてみたい人のために割れた器の販売でも、近いうちにしてみようかと企んでいます。お楽しみに!

> 金継ぎnicoのホームページ
> クロコの購入ページ


注1)現在、工房移転のため、直しの依頼については一時的にお受けできない状態となっています。


これも感動的にかわいい呼び継ぎの器。今はサンプルとして使われていますが、いつか紹介したいです。

奥の金色の部分が、金継ぎの蒔絵直しで直した部分です。

パッケージもかわいいクロコでみなさんも漆直しに挑戦してみてください。

ちなみに、この人はnicoさんではありません。