時の断片をまとう服
商品番号 | tk020003 |
商品名 | MOTION SLEEVE CHECK JACKET |
価格 | MOTION SLEEVE CHECK JACKET: |
限定数 | 購入ページにてご確認ください。 |
サイズ | > サイズ表 |
素材 | MOTION SLEEVE CHECK JACKET: |
支払方法 | 銀行振込・クレジットカード決済(PayPal) |
送料 | 無料 |
納期 | 2012年7月頃: |
備考 | この商品は返品不可とさせていただきます。 |
バイヤー | チバ |
服は進む
激しく明滅するフラッシュとともに始まった、ANREALAGE(アンリアレイジ)の2012-13 A/Wコレクションは、再びフラッシュの明滅に戻り、そして幕を閉じます。
目の前を通り過ぎるモデルの残像を眺めながら、ボクはいつしか、マルセル・デュシャンのあの作品、「階段を下りる裸体No.2」に、その姿をダブらせていました。
「TIME」
服の形を、静止した姿の美しさの中にではなく、流れゆく時間の中で動く存在として捉えなおそうとする試みが、今回のコレクションのテーマです。
ショーの始まりと共に現れた、数体の服は、歩く時の腕の動きや、脚の動きの軌跡を基に、その形と柄が作られた服。
ジャケットの袖は、肩から手の先に向かって大きくなっていく腕の軌道に合わせて、袖口が大きく開き、パンツも脚の軌道によって裾が大きく広がり、膝が前に飛び出しています。
それだけではなくて、生地のプリント自体も、腕や脚の「今」を表わす鮮明な柄の前後に、一瞬前と一瞬後を表現するように、動きによる「ブレ」が表現された柄が、プリントされているのです。
それは、デュシャンがマイブリッジやジュール・マレーの連続写真に着想を得て、絵画の中に時間軸を取り込み、絵画の概念を拡張しようとしたのと同じ。時間によって服と形の関係を拡張しようとする試みです。
(上から)
MOTION SLEEVE CHECK JACKET [RED] (左)
MOTION SLEEVE CHECK JACKET [RED] (左)
MOVING DOT JQ BLOUSE [BEIGE] + MOTION LEGS SHORT PANTS [BLUE]
MOTION LEGS SHORT PANTS [RED]
MOTION SLEEVE CHECK JACKET (¥57,750)
色:RED(上)、BLUE(下)
腕を振る動きによって、袖口が大きく広がって、柄も動きでブレています。さらに、襟も広がり、柄がブレます。
それは始まり
歩く人の動きを服に写し取る。
試行錯誤の中で生まれたその手法を、頑なに、ストイックに貫き、コレクションを作り上げるのが、これまでのANREALAGEのやり方です。
でも、今回デザイナーの森永邦彦さんは、握り締めていたその手綱を一旦緩め、辺りを見渡します。
動きと服の形の関係を探るとき、そこに現れるのは、その動きによって生じる「ブレ」や「ずれ」。
動きが作り出すこの現象に、森永さんは新しいデザインの可能性を見つけて、それが作り出す形を拾い集め始めるのです。
今回サイトでは紹介していませんが、例えば、生地にプリントされた蝶はその羽ばたきによってブレて写り、星は流れ星や長時間露光の写真のように尾を引き、チェック柄は移動によるブレでストライプに近づき...
あるいは、ボタンは連続写真で写されたように、ボタンホールを通る動きの軌跡上にずれて並び、ポケットの開閉も、その軌跡が幾重にも重なるパーツで表現されます。
MOTION LEGS SHORT PANTS (¥29,400)
色:RED、BLUE
歩く脚の動きで裾が広がり、膝が出たパンツ。柄も動きでブレています。
MOVING DOT JQ BLOUSE (¥39,900)
色:BEIGE、BLACK
動きの残像が表現されたドット柄。着方は2通りあります。(パンツはMOTION LEGS SHORT PANTS [BLUE])
輪郭への眼差し
動きによる「ブレ」や「ずれ」。
服が動くとき、その輪郭は揺らぎ、その存在は不安定なものになる...
その不安定な状態の中に、美しさを見つけ出したのが、今回のコレクションです。
実は、服の輪郭に目を向けた作品は、2011-2012 A/Wコレクション「LOW」から数えて、これで3回目、ということになります。
輪郭を、意識と実体との間で揺るがせたコレクション「LOW」。
輪郭を固定してしまうことで、服と体との関係を揺さぶり、形と意味との関係の脆さをも提示したコレクション「SHELL」。
振り返ると、ここまで3回の輪郭をめぐる試行は、どれも輪郭の形や意味にずれを生じさせることによって、服の新しい姿を引き出そうとしてきた、とも言えそうです。
そして、今回は時間と動きを切り口に、服の輪郭を組み立て直して、その輪郭の不安定さの中に、美しさと、新しい服作りの手がかりを見つけたコレクションとなりました。
OVERLAP LONG JACKET LONG TYPE (¥123,900)
OVERLAP LONG JACKET SHORT TYPE (¥81,900)
ズレによって重なったジャケットは、コートのような形に。
LONG TYPEは裾の部分を取り外して、SHORT TYPEにすることができます。
OVERLAP LONG SHIRTS (¥60,900)
色:WHITE、BLUE
シャツの輪郭がズレによって拡張されて、ワンピースのようになっています。襟は広げるとセーラーカラーのように。(上のOVERLAP LONG JACKETの中に着ているのがWHITE。)
4つの断片
今回発見されたのは、大きく分けて4種類の、動きをめぐる形の断片。
まず、最初に紹介した、人の動きを基にして服の形を組み立て直す、という方法。そして、動きを連続写真のようにズレと重なりで表現する方法。この2つが服自体の形に直接作用する方法です。
さらに、生地にプリントされたモチーフ自体が動き、ブレと残像で表現される方法。そして、着る人の動きが、プリントされた模様を動かしてしまう方法。
この4つが組み合わされたのが、今回のコレクションです。
最初に紹介した、歩く動きの服。
実は、ショーのときは立体を保つために、内側に芯のようなものが入った状態で着られていましたが、これを取ると生地は着る人の動きに合わせてユラユラと揺れて、大らかな陰影のある表情を見せる、柔らかい印象の服になります。
ズレと重なりを使った方法は、服やパーツの動きを追いかけるように重なる素材が、新しい形になって現れます。例えば、シャツはワンピースのように、ジャケットはコートのように、違う服の形になってしまう。
こうやって、歩く動きをきっかけに始まった形の探求は、手法がまた新しい手法を呼び込み、こだまするように広がって、様々な形や色として服の中に現れます。
それは、まるでディレイとリバーブによって、ダブという新しい音楽が生み出されたのにも似て... ずれて重なり、輪郭をにじませながら、新しい姿になって現れる服たち。
服作りの新しさを、常に求め続けるANREALAGE。
その作り出す形と、方法自体の新しさはもちろんのこと。
一番の新しさは、一度使った方法を全て捨てて、毎回1から新しい方法を探すという、その途方も無さ...なのだと思います。
次のシーズンも、楽しみにしています。
そしていつの日か、これまで探し出した方法とゆっくり向き合う日が来ても素敵だと思います。
そんなこれまでの作品の数々は、こちらから。
> ボタンでできた服!?
> 乱れ咲き
> ○ △ □ ?
> 凹 凸
> シルエット
> ちょうど良い服
> 見えないカタチ
> 保留される形
> 自立する服
> リペア魂 × ANREALAGE!!
> 昼の花/夜の花
そして、ANREALAGEのホームページでは、コレクションの他の作品も公開されます。
OVERLAP LONG T-SHIRTS (¥29,400)
色:YELLOW(写真)、BLUE、RED
こちらも裾のズレによってワンピースになっています。
DOUBLE LAYERED JACKET (¥57,750)
色:BLACK、GRAY
重なりとズレによって作られるポケットや襟、裾など。ポケットはズレによって二重になっています。