復活への脱皮
商品番号 | tk020303 |
商品名 | 脱皮スニーカー 2 |
価格 | ¥29,160(税込) |
限定数 | - |
サイズ | レディース: |
素材 | 甲材:牛革、底材:合成底 |
支払方法 | 銀行振込・クレジットカード決済(PayPal) |
送料 | |
納期 | 1ヶ月程度(時期により異なるため、正式な納期はご注文時にお知らせします。) |
備考 | この商品は返品不可とさせていただきます。 |
バイヤー | チバ |
成長する靴
脱皮スニーカー 2。
その前身である「脱皮スニーカー」が、ブランドNO(ノウ)から発表されたのが、2009年のこと。
それはNOの最初のcollection Aの中で発表され、世に出されました。
前回の脱皮スニーカーを、すでに知っているという人も、そしてまだ記憶に新しいという人もいるかもしれません。
スニーカーの下1/3ぐらいまでが、厚い合成樹脂で覆われていた、前回の脱皮スニーカー。
その存在は、センセーショナルでした。
そして、「脱皮スニーカー 2」として復活した今回は、スニーカー全体が薄い樹脂の皮膜ですっぽりと覆われて、新しく生まれ変わった姿での登場。
その表面は、皮膜が所々で破れ、ベースのスニーカーが白い革をその穴から覗かせています。
ご想像の通り。
樹脂の皮膜は、履くにつれ、ある所では破れが進行し、ある所は残り、履く人の動きを記録するように、徐々にその姿を変えていきます。
それは、常に変わり続けるデザイン。
まるで履く人の動きをエネルギーとして、靴自体が変態を遂げ、そして次のデザインへと生まれ変わっていくように。
そうして成長を続けるのが、この脱皮スニーカーです。
誕生と復活
ブランドNOのデザイナー齊藤泰三さんとの出会いは、密買東京ですっかりお馴染みのブランド カガリユウスケ、というより、明松くんの家で。
そこに集った沢山の人たちが、「あの脱皮スニーカーの」という言葉に反応していたのが、とても印象的でした。
NOの代名詞とも言える存在だった、脱皮スニーカー。
でも、製作環境の変化などがあって、作られない期間が続き...
というか、齊藤さんからは、しばらく作ることができないだろう、とさえ聞かされていたのです。
そんな脱皮スニーカーが、驚きの復活。
そこには、ある理由がありました。
脱皮という名前が表わす通り、このスニーカーは、成長をコンセプトに作られています。
「足に馴染む過程」を「靴の成長過程」と捉えて、「成長=脱皮」を表現したというこのスニーカー。
身に付けるものでありながら、服や靴は無機的な存在だということに、違和感があったという齊藤さんは、体と共に有機的に変化する存在になることを目指して、この脱皮スニーカーを作りました。
つまり、人が履くことで命を吹き込まれるこのスニーカーは、齊藤さんにとって命を感じさせるプロダクトでもあったのです。
それをどうにか復活させたい。
そう決意させたきっかけは、あの2011年の震災。
そして、時期を同じくして生まれた、娘さんの存在でした。
巨大な悲劇の前に沈む世界の中で、これから生きていく小さな命のためにも、未来に向けて新しい希望の光を投じたい。
そう思ったときに、齊藤さんが選んだのが、このプロダクトの復活です。
それは、簡単なことではないけれど、あの災害の負の力の大きさは、逆にその困難を乗り越える原動力にもなったようです。
脳と手
ブランド名の「NO」。
それは、文字通り否定を意味するNOであり、創造物を生み出す「脳」をも意味する言葉です。
でも、ブランドNOにおける脳は、頭蓋骨の中に収まっている脳だけを意味するものではないようで...
いつも、NOのコレクションの中で、かなりの割合を占めているのは、デザイナー齊藤さん自らの手で仕事や加工が施された作品の数々。
実は、この脱皮スニーカーも1足1足、齊藤さん自らの手で樹脂が吹き付けられ、そして齊藤さんの手であらかじめ少し破られた状態で、出荷されます。
だから、脱皮スニーカーは全て一点もの。
全てが違う姿で、世に送り出されるのです。
でも、この程度の手仕事は、NOのラインナップの中では、まだまだ序の口に過ぎません。
これまで発表された中では...
全面にビッシリと自らの手の指紋がスタンプされたスニーカー、四角いスタンプをひたすら押して編み目を表現した作品、1円から500円までの硬貨をスタンプして模様を施した作品など...
もはや簡単にプロダクトなどと呼ぶのもはばかられるような、狂気の一歩手前の手仕事が施されたものも沢山ありました。
大量生産のための技術だけでは作れない、「ニオイ」を感じるプロダクトが作りたい。
そんな素朴な言葉でサラリと語る齊藤さんの手の業は、立体の縁をペンでなぞるような、作品にそっと添えられるものから、恐ろしいほどの圧倒的な作業量を投じるものまで様々です。
手と脳。
その濃密なる関係は、ここで今さら語るまでも無く。
手もまた拡張された第二の脳として、NOの創作を支えていると同時に、時に自立的/自発的な推進力として、その創作活動を進める力となっているのが、作品から伝わってきます。
そして、それが他にはない強度と存在感となって、NOのプロダクトに現れているのは、ボクらのようなファッションの外にいる人間から見ても明らかです。
デザインのNO
そして、脳を表わすその名の通り、戦略的に考えられた手法によって作られる作品たちも、NOの大きな魅力の1つです。
NOのコレクションを最初に見たのは、遅ればせながら2010年。Collection Cのときでした。
【MISSING LINK】と名づけられたそのコレクション。
それは、奇しくもNOのクリエイションにとって、新しい手法の獲得によって、その後の転機となったコレクションでもあるようです。
その時のテーマは、「靴という存在が一度消滅し、その存在を復活させた文明がつくる靴。」
まるで、断片的に残された靴というものの情報を手がかりにして、新たに靴が作り出されたようなコレクションは、新しい靴作りの手法に対する可能性を感じさせる、予兆に満ちたコレクションでした。
例えば、靴紐が結ばれたまま縫い付けられ、サイドゴアが付けられた靴。コインローファーのバンドが肥大して、お札も入ってしまうようなビル(札)ローファー、などなど。
そこで提示されていたのは、新しいデザインであると同時に、新しいデザインを生み出すための戦略のデザイン。
靴の作り方を「間違える」ことによって、新しく発見される、思いがけない靴の形。そして同時に、それを作る方法さえも、新しく発明するチャンスがそこにある。
その発見は、NOのその後の創作活動に、新しい方向性を与えることになったようです。
靴作りの過程における「失敗」の中に、新たな「成功」への鍵を見つけた齊藤さん。
むしろ、失敗こそが成功、なのかもしれない。
その可能性を追求するため、NOは活動の拠点を生産現場の中へと移し、新たに活動をスタートさます。
製造工程の失敗の中には、靴の構造さえ新しくしてしまうような、デザインのヒントがある。
それは、単に装飾的な形だけをデザインすることに対する、「NO」。の始まりなのかもしれません。
そんなNOのこれまでのコレクションなどは、NOのホームページでも見ることができます。
それから、実はこの脱皮スニーカー 2は、ボクも自分で買って、履き始めています。
その成長の様子も、またここでレポートしようと思っているので、お楽しみに。