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計算ずくの不安定

商品番号tk019802
商品名

drape(B/White)
drape(小鉢M)
drape(小鉢S)
drape(平皿M)
drape(平皿S)

価格

drape(B/White):¥4,320(税込)
drape(小鉢M):¥4,536(税込)
drape(小鉢S):¥3,996(税込)
drape(平皿M):¥4,536(税込)
drape(平皿S):¥3,456(税込)

限定数

-

サイズ

drape(B/White):Φ80mm×H85mm
drape(小鉢M):Φ116mm×H58mm
drape(小鉢S):Φ100mm×H53mm
drape(平皿M):Φ195mm×H25mm
drape(平皿S):Φ135mm×H23mm

素材

磁器

支払方法

先払い
銀行振込・クレジットカード決済(PayPal)

送料

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納期

1ヶ月程度

備考

この商品は返品不可とさせていただきます。
写真の色は実物と異なる場合があります。

バイヤーmikayama

仙人なのに

飛松さんに仙人って言うと怒るんです。
吉祥寺時代にアトリエをシェアしていた佐藤冬樹さんの方がよっぽど仙人ぽいと。でも、僕の中では冬樹さんは変人。飛松さんは仙人。
冬樹さんは天才。飛松さんは秀才。という言い方でもいいかもしれません。

天才は隔絶してしまっているんですね。だから変人。
だけど、飛松さんは積み上げる。ひたすら。形の中に自分の感性やアドリブで作られた部分をなるべく残そうとしない。だから飛松さんの作る形はクラフトっぽいものではなく、プロダクトっぽいものになるような気がしています。

でもね。
このdrapeってシリーズは、上記の意味からちょっとずれている気もするんです。だってdrapeって皺(しわ)ですよ。なんかすごく不安定なものです。それを形にしようとすると、どうしてもデザイナーの感性みたいなものを介在せざるをえない。

drape(B/White)

drape(小鉢M)

縁の部分には別の皺が寄っています


dot_line.gif

クラフトに対する違和感

飛松さんの実家は佐賀の機械工です。
実家には、たくさんの機械や工具が転がっています。原則的には機能しか持たないものなのに、なぜかかっこいい。そういうものたち。

そんなものに囲まれて育った飛松さんは高校時代に現代アートが好きになります。バックボーンとして時代背景や理論を持ちながら、形としてインパクトを持っているもの。
多分、すごく新鮮なものに見えたんだと思います。
だけど、ある種。自分の実家に転がっているものと同じようなものにも感じたのかと。

そんな延長線上から陶芸に入ってきた飛松さんは、字義通りのクラフト的な作品に拒否感を示します。手作業であることに甘えている作品が多すぎる。そう感じたらしくて。できる限り、自分の作品からはそういう匂いを排除しようと思いました。そんな過程の中から選んだ手法が「型物」であったというのはすごく腑に落ちるのですが。


drape(小鉢S)

プリンの型みたいです

drape(平皿M)

平皿が内側の皺が一番わかりやすい


dot_line.gif

不安定の中から生まれる形

結果的にやっている作業というのはちょっと型物にイメージする作業とは違っていまして。finのときにも書きましたが元になる「泥しょう(デイショウ)」というのは普通の粘土とは違って、液状のものです。

さらに。
現在、世の中で型物として制作される製品は飛松さんの使っている「がば鋳込み」という方法ではなく、主に「圧力鋳込み」という方法で作られています。「がば鋳込み(排泥鋳込み)」というのは外側だけの石膏型を作って、そこに泥しょうを流して時間を経てから余分な泥しょうをガバっと出して型に残った被膜を取り出す(だから「がば鋳込み」と呼ばれている。)というやり方なのですが、「圧力鋳込み」というのは内側と外側の石膏型を作って、その間の隙間に泥しょうを圧力をかけて充填するというやり方をとります。
その「圧力鋳込み」のメリットは形が安定すること。隙間自体が内型と外型で定まっているので充填する泥しょうの量が決まっており排泥する必要がないことと、定圧で充填されるので器(被膜)全体にかかる負荷が均等で無理のない成形が可能になります。また、鋳込んだ後も2つの型に挟まれているので気候などの環境差があまり影響せず乾燥の際の歪みが少ない。

なのに、飛松さんの使っている手法は「がば鋳込み」。この手法のメリットは、器の外型に施された意匠を器の内側に自然なラインとして反映させる事ができること(drapeの場合は皺の意匠)。デメリットは技法自体が実はすごくアナログなこと。排泥(余分な泥しょうを捨てる作業)の際に器にかかる負荷が大きいため不均一になりやすく、乾燥のときも器の内側だけが外気に直接さらされるため、結果としてどちらも歪みの原因に繋がるという不安定な技法なんです。

つまりですね。
液体のような不安定な粘土(泥しょう)から、形が不安定にでがちな「がば鋳込み」という手法を使って、drape(しわ)という不安定な形を取り出そうとしているんです。完全に自分でコントロールした状態で。

ちなみに、「がば鋳込み」で普通に器を作ろうとすると高い確率で歪むんです。器が。なのに、試行錯誤を繰り返して結果的に飛松さんの作品は高い確率でほぼ真円を保っている。成功率も高い。このために多分飛松さんしかやっていないであろう独自の排泥技法があるのですが、、これは内緒で。


drape(平皿S)

富士山みたい

この状態で乾燥させます


dot_line.gif

飛松さんと納期

結果的に手が自由に作ったものでは無くなっています。
だけど、このdrapeというシリーズに限ってはそこにデザインの介在している比率が多少多いように思っているんですね。飛松さんの作品にしては。
だって、モチーフがしわだから。

でも、結果的にそれがここちいいバランスになっている気がしていて。
当然に飛松さんのfinシリーズも好きで、家で使っていたりもするのですが。やはりあの作品は使用するときに多少の緊張感を持たせるんですね。かっちり計算されている感じが。

それがこのdrapeのシリーズにはあんまりない気がしていて。皺の持つゆるさみたいなものが生活の中にはすごくフィットするんだろうな、と思っています。多分、触り心地も影響している気がしますが。

さてさて。
前作に3年かけた飛松さん。
今回、2年で仕上がった。しかも、椀も平皿も。早いじゃないですか!なんて、冗談を言ってみたら「この作品は弟の結婚式の引出物として作ったんですよ。納期あったからいつもより早くできました。」と。

いや、まじで。
飛松さんに納期作ってみましょうよ。誰か。そしたら、面白い作品がもっとできそうな気もする。うれしいなあ、売る側としては。

でも、そしたら飛松さんはパンクするんだろうな、とも思っています。割と確信をもって。本当に山籠もりしちゃう。でもでも、そしたらもっと面白い作品ができそうな予感が。。
変な人です。本当に。


飛松さんのfinシリーズに関しては下記をご覧ください。
> 型物への挑戦

天才冬樹さんの作品は下記をご覧ください。
> ある偉大な努力の結晶


吉祥寺から神楽坂に引っ越しました

研究所のようなアトリエ

生活に馴染むと思います