街のガラス屋さんの野望
商品番号 | tk025502 |
商品名 | 月色のグラス |
価格 | 月色のグラス:¥4,950(税込) |
限定数 | 月色のグラス:3 |
サイズ | 月色のグラス:φ約80mm×H約70mm |
素材 | ガラス |
支払方法 | 銀行振込・クレジットカード決済(PayPal) |
送料 | |
納期 | 1ヶ月程度 |
備考 | この商品は返品不可とさせていただきます。 |
バイヤー | mikayama |
パン屋さんのようなガラス屋さん
以前から取り扱いをさせてもらっているえむにの水上さんに今回のバーナーを使って作った耐熱ガラスの作品群について話を聞いてたら「街のガラス屋さん」の話になりました。街のパン屋さんってあるでしょ?フランスパンも食パンも菓子パンも作る街のパン屋さん。えむには街のガラス屋さんになりたいんです。なんでも作れる街のガラス屋さん。
確かにえむにの2人はいろいろなガラスの作品をつくることができます。旦那の水上竜太さんはブローワークとバーナーワークを操り、奥さんのマエダミユキさんは絵付けなどを行い、結果通常のガラス作家には生みだすことが難しいほどの多様な作品を作り出すことが可能です。
前回書いた通りその多様性のために何を作る作家さんなんですか?という問いにはなかなか答えることができないのですが(通常の作家さんはガラスの中でも単一技術を突き詰めていることが多いので、例えばブローワークの作家さんだな、とか分かりやすいんです。)街のパン屋さんと一緒という意味では当たり前にいろいろな作品を作ることを是としています。
普通の黄色いグラス?
コーヒーを注いでいくと段々と!?
セクシー系のダイアのコップ
爽やかでかっこいいFlowのコップ
ブローワークとバーナーワーク
当然のようにブローワークとバーナーワークと書いてしまいました。。
ざっくり書くとブローワークというのは吹いてガラスを成型する手法で、バーナーワークはバーナーを使って成型する手法です。ブローワークは主に器を作るのに使われて、バーナーワークは細かい細工ができるのでトンボ玉とかアクセサリーとか小さなガラスを作るのに使われます。で、えむに水上さんの特徴は上記のバーナーワークとブローワークを両方並行して使えて器を作れることだったりします。分かりづらいですよね。。
普通はブローワークだけで器を作れるし、逆にバーナーワークを使って器を作るのはアクセサリーを作るよりも難しいので(モノにもよりますが)器とかそういうものを作ろうとする場合はバーナーを習得する必要はないんです。またそれを作るために使う道具が全然違うのも結果的に両者の技術を完全に分けている原因だったりします。
では、なんで水上さんは両方使えるのか?バーナーを使えると作れる作品の幅が単純に広がるんですね。デザインの幅が広がるともいえると思います。
あと、その背景として1970年代にアメリカで生まれたスタジオグラスムーブメントという運動も影響していて。自由な技術交換を応援する雰囲気がガラス作家間にはあるんですね。技術を独占しようとはそれぞれの作家さんがあまり思わない。結果的に技術を人に教えたり、教えられたりというのがすごく盛んな環境だったりします。ですので、水上さんは技術の幅を広げる才能もあったし、技術を学べる環境も備わっていたというわけです。
まずは「月色のグラス」の作り方。銀を気化させてガラス管に付着させていきます。
ドットをのせたものを青白い色味を発するように弱めの炎でじっくり炙ります
ドットが馴染んできたら息を入れて膨らまして底を平らに仕上げて
片側にできた小さい穴をギュッと広げて完成です
今回の作品
大別するとバーナーワークとブローワークなのですが、その中でもいろいろな技術があります。例えば今回ご紹介している「月色」というシリーズはヒューミングという技術で銀を気化したものを吹き付けて作られています。細かい金属の粒子であることもあって、背景の色や光の加減で青から黄までの色に条件によって変化します。
また「Flow」と「ダイア」のシリーズはベネチアングラスの技法とブローガラスを利用して作られています。吹いた耐熱ガラスに別で熱したガラス棒をくっつけて、ねじったりくっつけたり。ちなみにバーナーワークを使う場合は部分的な冷却と過熱を繰り返すので結果的に耐熱ガラスを使用していたりします。
そんな訳で水上さんはいろいろな技術を駆使して、それぞれの作品を作っていたりします。
次はダイアシリーズの作り方。まずガラス棒がくっついたガラス管を作ります。
1か所あっためてつまみます
さらに別の場所をあたためてつまむを繰り返し・・
できたダイアのガラス管を吹いて膨らませて欲しい大きさにします
えむにの野望
本当にこんなにいろいろな技術を駆使しながら器づくりをしている人って日本中探してもあまりいないんです。というか、多分いない。それほど多様な技術を身につけてしまった背景は上記のようなガラスの環境や水上さんの才能にもあったのですが、一番重要だったのはえむにの持っている理想の話で。えむには最終的にテーブルをえむにの作品で埋めたいと思っているんですね。食卓の上、全てを。
作家さんというかたちで、この状態を理想にする人ってなかなかいなくて。むしろ僕はメーカーとかブランドとかそういうものがもつ世界観に近いかな、と思ったりするのですが。なので、水上さんにむしろ作家さんじゃなくてメーカーを目指しているんですか?みたいな話を聞いていたら、いや街のガラス屋さんだと。。
街のパン屋さんでも八百屋さんでもよろず屋さんでも食卓全てを想像してやろうとはやはり思わないと思うんです。また、普通のクラフト作家さんでもそこまでの範囲の夢を持っている人ってなかなかいない。あ。夢として持っている人はいるかもしれないけど、その多様性に耐えうる技術を持っている人がいないというか。当然、テーブルの上がほとんど同じようなデザインの器だとどこかで飽きがきてしまうところを技術の幅で解決しようとする。多分これって夢というか野望に近いと思うんですよね。
ちなみに水上さん。そうすると他にも隠れて修行している技術あるんですか?みたいな話を聞いたら、切子のような削るのも勉強してるよ、と・・・
なんか話を広げるだけ広げてしまいましたが、実は水上さんはガラスが好きだからやっているだけでもあったりするので。そこまで大層な話でも無かったり。
でも、僕はやっぱり変だと思ってます。
密買東京では他に「えむに」の下記の作品を取り扱っています。
> 半透明のガラス
> 無限の世界
「えむに」に関して詳しくは下記をご覧ください。ブログには今回の作品を含め様々な作品の制作風景なんかもリポートされていて面白いです。
> えむに
暗い環境だと黄色の器のままです
背景が暗めのところで光を当てると青くなります。水上さんも色が変わる理由は分からないとのこと、、
分かりづらいのでもう1枚。手がかぶっているところは青く見えます。
アイスコーヒーなんかはすごく似合います