影と光
商品番号 | tk026503 |
商品名 | KOMORE-BI JACQUARD ONEPIECE |
価格 | KOMORE-BI JACQUARD ONEPIECE: |
限定数 | 商品購入ページでご確認ください |
サイズ | |
素材 | KOMORE-BI JACQUARD ONEPIECE: |
支払方法 | 銀行振込・クレジットカード決済(PayPal) |
送料 | 無料 |
納期 | 2015年2月頃 |
備考 | この商品は返品不可とさせていただきます。 |
バイヤー | チバ |
ついに
「パリへ。」
これまで折につけ幾度となく話題に上ってきた、その言葉。
記憶をたどれば、それは初めて話をしたあの日にまで遡ることになります。
床も壁も、全てを真っ白に塗り込めたマンションの一室で、渾身の作品を生み出していたあの頃。
ファッションに「王道」があるとするなら、それと交わることなど想像もできない服作りのその先に、「世界」を捉えていると聞いたときの、目の覚めるような新鮮な気持ちは、今でも脳裏に焼きついています。
あれからいくつもの季節を越えて。
信念を貫くその服作りによって投じた一石一石の起こす波紋は徐々に大きくなり、その夢がにわかに現実味を帯びてきた、この1、2年。
そして、ついにブランドはその発表の場を憧れの地へと移すことになったのです。
光をまとう影
2014年9月23日、セーヌ川のほとりにあるBeaux-Arts Salle Melpoméneで発表された、ANREALAGE(アンリアレイジ)の2015 S/Sコレクション。
「SHADOW」というそのタイトルには、日本語で「光」という副題が添えられています。
その名の通り、光と影をテーマにした今シーズン。
それは、これまで追求してきたスタンスを貫きながらも、やはりいつもとは少し異なるコレクションでもありました。
白と黒の2色だけで表現された今回。
前半に登場したのは、服自体に影の形があしらわれた服。
影をまとう服、というよりもむしろタイトルが表わす通り、影が光をまとう、というのが正しいような、そんな印象の服たちです。
そして後半には、2013-14 A/W 「COLOR」からの流れを汲む、他分野の技術を取り入れた服が登場。
奇しくも、その第一弾となった「COLOR」と同じ原理を用いて表現されたのは、紫外線が当たると白から黒へと色を変える服。
夜や室内では真っ白な姿を見せるそれは、日光など紫外線を含む光を浴びると、その当たる部分だけが黒く影のようになり、光が当たらなくなれば、スッとまた元の白に戻ります。
つまり、光の当たる部分が影のように黒くなり、影の部分は明るい白になるという、明暗の反転が起こるのです。
瞬時に変化するその反応は、日の光の下で木漏れ日や、人の動きなどを感じ取り、陰影の濃淡を移ろわせます。
白から黒へ。その変化を生み出しているのは、フォトクロミック分子という、紫外線に反応して色を変える特殊な物質。
実は前回の「COLOR」の時、黒だけは技術的に出すことができなかったのですが、その後わずか1年半のうちに更新された技術によって黒の表現が可能に。
同じ技術を用いながらも、鮮やかな色の世界と、色のない陰影の世界という、ある意味で対極の表現が生み出されたのです。
ショーの最後には、紫外線のレーザーを照射して、白い服にリアルタイムで柄を描くという演出も。
暗闇に青白く浮かぶレーザーの瞬き。
SF的で幻想的なその光景に息を呑み、静まり返ったパリの会場は、デザイナー森永邦彦さんの登場によって、喝采に包まれました。
SHADOW CREWNECK KNIT
光を表わす白いパーツは着脱可能。影は斜め下へと滲むようにはみ出して、アシンメトリーな形を作ります。
SHADOW PLEATS SKIRT
白いパーツはエプロンのようになっています。
光と影
テーマである影を表わす色、黒。
パリに行けるのなら、それを第1回目のテーマにしたい。
以前から、森永さんの中ではそんな思いが明確にありました。
意識されていたのは、「黒の衝撃」。
80年代初めにCOMME des GARÇONSと、Yohji Yamamotoがパリコレに登場し、黒一色のコレクションで世界に衝撃を与えたという出来事です。
同じ黒で勝負をしたい。そして、それを自分の表現で塗り替えたい。かねてから森永さんはそんな思いを抱いていました。
その黒を、特殊な色素の力を借り、白との間で揺らめく存在へと変えて見せた今回のコレクション。
そして、もうひとつ。
表裏を表わす光と影、それを逆転させるという発想は、これまでのANREALAGEの服作りにおいて根底をなしてきたテーマだとも言えます。
初期に見られた圧倒的な手仕事、続く造形の探究、さらにここ数年取り組んでいる異分野の技術との融合。
どれも驚くべき表現による、センセーショナルなコレクションでありながらも、実はその着想や出発点にあるのは、日常の中に落ちている見過ごされがちな小さなこと。誰もが意識の中から消してしまっているようなものばかりなのです。
当たり前のこととして通り過ぎるようなことに目を向け、疑問を感じ、驚きを見出す。それは、普段意識されることのない影に光を当て、それを白く浮かび上がらせようとした今回のコレクションに通じています。
声高にアンチテーゼを掲げるでもなく、批判をするでもなく、淡々とした態度を貫きながらも、見過ごされがちな疑問や驚きに光を当て、それを立体的に浮かび上がらせる。
それがANREALAGEで森永さんが表現していることの本質であり、白と黒という潔い世界の中で、影と光を行き来可能で反転可能なものとして提示した今回の表現は、パリでの初回のテーマとして、とても自然なものだったと言えそうです。
SHADOW PHOTOCHROMIC LONG COAT
下の写真のように、紫外線が当たった部分の色が黒に変わり、当たらない部分は白く残ります。
新たな日常へ
パリでのデビューにあたり、フォトクロミックや、レーザーカット、パッチワークなど、これまで培った技を結集して臨んだ今回。
同じ表現を繰り返さないという信念は貫きつつも、世界にANREALAGEの存在を知らしめるための総決算という色合いが強いコレクションでもありました。
会場の選定から、機材の調達など、全てにおいて立ちはだかる思いがけない困難の連続。それを乗り越えて迎えたというショーは、完璧というには程遠いものだったのかもしれません。
演出も、最後の最後まで思った表現ができず、本番の数時間前に偶然現場に居合わせたkeisuke kandaの神田恵介さんによる一言に救われる形で決まったのだと。
実際に現地で見ていても、失敗しないか、そしてパリの人たちに伝わっているのか、そればかりが気になって、服を楽しむ余裕などないまま、ショーはあっという間に幕を閉じました。
そして、エレガンスに最上の価値を置くというパリで、これからどんな表現をしていくのか、という新たな課題も見え隠れ。
でも、とにもかくにもパリコレデビューという洗礼の儀式を終えたANREALAGE。
「実は、黒の衝撃っていう言葉はなかったみたいです。」
まるでシャワーでも浴びてきたかのように、さっぱりした表情でそう言う森永さん。
当時は衝撃をもって迎えられた漆黒の姿も、その後、表現のひとつとして定着し、もはや当たり前のことに。それ以前に、当時のパリでその現象を「黒の衝撃」と呼んでいた形跡もなさそうだった。それは、後の人々によって表現された言葉なのかもしれない、と。
まだ見ぬ世界を空想し、見えない敵と戦ってきた時間は終わりました。
これからは、このパリが活動の舞台であると同時に、ANREALAGEにとって日常を形作るひとつの要素になってゆくのです。
そこでどんな発見をし、それがどんな表現に生まれ変わるのか。新しい自由を手に入れ、これからがますます楽しみになったANREALAGEです。
そんなANREALAGEのこれまでのコレクションなどについては、下のリンクからこれまでの紹介ページと、ANREALAGEのサイトで。今回のショーの動画も見ることができます。
> 昼の花/夜の花
> ボタンでできた服!?
> 肌身を離れず
> サイズのない服
> 日に咲く服
> 残された美しさ
> 時の断片をまとう服
> 自立する服
> 保留される形
> 見えないカタチ
> ちょうど良い服
> ○ △ □ ?
> 凹 凸
> シルエット
> 乱れ咲き
> リペア魂 × ANREALAGE!!
> ANREALAGEのホームページ
KOMORE-BI JACQUARD ONEPIECE
公園で木の影の形を採取して、生地の柄にしたというワンピース。柄はプリントではなく、ジャカード織で表現されていて、繊細な生地になっています。(レーザーカットされた黒いトップスは付属しません。)