漫画を奏でる
商品番号 | tk027303 |
商品名 | 紙巻きオルゴール漫画 |
価格 | 紙巻きオルゴール漫画:¥550 |
限定数 | - |
サイズ | オルゴール: |
素材 | 紙、他 |
支払方法 | 銀行振込・クレジットカード決済(PayPal) |
送料 | 紙巻きオルゴール漫画:385円 |
納期 | 1週間程度 |
備考 | 紙巻きオルゴール漫画に、オルゴールは付属しません。オルゴールをお持ちでない場合は、OTOWA 紙オルゴールキットを合わせてお求めください。 |
バイヤー | チバ |
まさかの出会い
誰もが見たことのある、この小さな装置。
クルクルとつまみを回せば、ポロリポロリと、透明感のある金属の音が聞こえてきます。
これはオルゴール。
なのですが、たぶん皆さんが知っているそれとは、きっと全く違う物。なぜかというと、このオルゴールだけでは音を鳴らすことができないからです。
よく見ると、上の部分に平たい口のような所があって、ここにあるものを挟んでから、つまみを回してやると、耳慣れたあの音色が流れ出します。
その"あるもの"とは、穴の空いた紙の帯。
幅4cmほどの紙を差し込むと、回転によって紙が吸い込まれていき、通過する穴の位置に合わせて音が出る、という仕組みです。
と、ここまででも「ほほーっ。」という感じ。
だけど驚くのはここからです。実は、今回紹介するこの紙の帯には、漫画が描かれているのです。
その名も「紙巻きオルゴール漫画」。
コマを送るように、スルスルと出てくる漫画に合わせて、オルゴールの奏でる曲も進んでいき、目で漫画を追いながら耳では音楽、と2つのメディアが、ゆるく融合=マルチメディア(?)。それをアナログに自分の手で、というのがなんとも楽しい体験です。
単に動画を再生するのとは、全く違って。
これは想像以上にハマります。
漫画の調べ
今回紹介する作品は、11人の漫画家による全13種。2013年に最初のシリーズが発表され、2015年には第二弾が登場しました。
漫画とオルゴールの融合、と一口にいっても、その方法は大きく2つのタイプに分けることができます。
1つは、既にある曲にのせて漫画を描く方法。もう1つが、今回の紙巻きオルゴール漫画のために曲から作ってしまう方法です。
そして、2番目の方法の場合には、さらにバリエーションがあります。
初回に登場した漫画家の、ふかさくえみさんが一番分かりやすい例なのですが、音を指定する穴の位置と漫画との関係を良く見ると、あることに気付くはずです。
それは、穴のほとんどが漫画の絵の一部になっている、ということ!つまり、この漫画は穴がなければ成立しないのです。
漫画の中で図として意味を持っている穴が、そのまま楽譜のように音の高さやタイミング、数などを決めることになる。だから文字通り、“漫画をオルゴールで演奏する”ということになります。
他にも、嫌でも気になってしまう存在が、第二弾に登場の西島大介さん。「DJまほうつかい」として音楽活動もされ、注目を集めている西島さんの作品は、2012年に発表された本、『すべてがちょっとずつ優しい世界』から派生した内容になっています。
音楽家でもある西島さんの作品は、もちろん今回のために作られたオリジナルの曲。『すべてがちょっとずつ優しい世界』の音楽バージョンとも言える内容です。
しかも、驚いてしまうのが、本の中で重要なモチーフのひとつとなっているオーロラの形が、この作品の中に穴で描かれているということ。これも、ふかさくえみさんの作品と同じ手法だといえます。つまり、この形でなければ成立しない、音と漫画の融合がここに表現されているのです。
他の漫画家の作品の中にも、程度の違いこそあれ、同じような表現がされているのが見て取れます。
例えば、セリフがなく淡々とシーンが連なるようなカシワイさんの作品。一見、抽象的にも見えるこの世界で、穴は風や主人公の意識、そして寂寥感などを表しているように見えます。
そして、そんな表現は既存の曲を使った作品でも感じることができます。森泉岳士さんの作品では、風景の中に空けられた穴が、雨や雪、あるいは風などを表しているようにも見え...
そんなふうに見るたびいろいろ考えて楽しみながら、ついつい何度も鳴らしてみたくなる紙巻きオルゴール漫画なのです。
紙巻きオルゴール
“漫画を奏でる”ような、この商品。
実は、このオルゴールを使った、もうひとつの楽しみ方があります。それは、自分で曲を作り、演奏する、という楽しみ。
それが普通のオルゴールとの最大の違いです。
この商品は、漫画作品と、それを再生するためのオルゴールとを、別に購入するようになっています。そして、オルゴールには譜面のような線が印刷された帯が付いてきます。
さらにもうひとつ付属するのが、小さなパンチ。
これを使って、紙に穴を空けていくことで、曲を作ることができるのです。
「作曲」というと、ちょっと大げさな気もするけれど、でもこれは紛れもなく作曲。同時に、演奏をするという意味で、これは小さな楽器でもあるし、作られた曲を再生するための装置でもある。そして、音楽を作るための道具でもあるという、いろいろな顔を持っているといえそうです。
ゼンマイ式のオルゴールとは違って手で回すので、速さが一定になりづらいところも、不思議な魅力のひとつ。ちょっとした揺らぎが、なんだか心地良い響きを生み出すのです。
さて、では曲を作ってみようか、と譜面のような紙と向かい合うものの...
音楽を勉強した人ならスラスラと作れてしまうのかもしれないけれど、普通の人はなかなかそうもいきません。
と思うところなのですが、まずは1枚無駄にするつもりで、テキトーに穴を空けてみます。すると、これがなかなかどうして、何も考えずにやっても意外と曲っぽくなっちゃうのです。
あれ?才能あったのかな?
きっと、そんな気持ち良い錯覚にはまってしまうはず。
実は、それには理由もあるそうで、もともとこのオルゴールにセットされているのが、ピアノでいう白い鍵盤の音だけなので、音が重なっても濁りにくいのだとか。
小さい子どもから、大人まで、これはかなり楽しめそうです。
そして、もうひとつ。
この特性を生かして、穴で文字などを描いてメッセージとしてプレゼントするのも良さそう。ドットでできたグラフィックのように、ミニマルな表現になるので、デザインとしても楽しめます。
どんな曲になるかは、鳴らしてみてのお楽しみ。
厳密にいえば、穴を空ける位置によっては、音にならない穴も出てきますが、ここはメッセージとデザイン重視。細かいことは気にせずにいきましょう。
出会いの必然
この「紙巻きオルゴール」は、杉山 三さんが「trois」の名前で商品として販売、自身でも絵を描いたものを作品として発表したり、ワークショップなどの活動も展開しています。
わずか15の音階と、4cmほどの幅。
そんな制限の中だからこそ、小さい子どもから大人まで、音楽の知識や、絵の技術がなくても、表現がしやすいのかもしれません。
そして、そんな紙巻きオルゴールに注目したのが、「mieru record」として、漫画と音楽の融合を目指す活動をしていた、石崎孝多さんと萱島雄太さん。
実は、石崎さんは以前「Only Free Paper」というフリーペーパー専門の店をやっていたときに、密買東京にも登場してくれた人。なかなか衝撃的だったその活動、もしかすると覚えている方もいるかもしれません。
共に活動をする萱島さんは、自身でも漫画家として作品を発表しています。特徴は、WEBなど紙媒体にとらわれない発表形態と、例えばスマートフォンの縦スクロールに特化した表現など、媒体ごとに紙ではできない表現に挑戦していること。
そんな先進的な活動が評価されて、「文化庁メディア芸術祭」を始め、コンテストなどでも数々の賞を獲得しているそうです。
mieru recordとしては、2012年にエリック・サティの曲「ジムノペディ」を題材とした漫画を6人の作家が描く「prologue -Gymnopédies-」という作品を発表。続く2作目となったのが、今回紹介する紙巻きオルゴール漫画です。
まさに出会うべくして出会った三者による企画。
今後も詩や写真など、異なる分野の表現との融合を模索したいと語る杉山さん。そして、mieru recordも漫画の新しい表現領域を探求していくといいます。
今後も要注目な、その活動はこちらでも是非。
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