職人の世界
商品番号 | tk027402 |
商品名 | ねじり平皿 |
価格 | ねじり平皿 6寸:¥5,170(税込) |
限定数 | - |
サイズ | ねじり平皿 6寸:φ190mm×h25mm |
素材 | 磁器 |
支払方法 | 銀行振込・クレジットカード決済(PayPal) |
送料 | |
納期 | 3週間程度 |
備考 | この商品は返品不可とさせていただきます。 |
バイヤー | mikayama |
職人と作家
クラフトの世界において、いわゆる職人さんの世界と作家さんの世界は隔絶しているように感じます。
生き方とでもいうのでしょうか?
もちろんいろんな作家さんがいるので、技術レベルが職人さんの方が優れている、というわけではないのですが、職人さんがいる例えば窯元に行ったときに行われている、寸分狂いのない形をなるべく早く、というような世界観は、作家さんが一つのかたちをデザインして創造して作り上げていく世界とは全く雰囲気が違います。
どちらもプライドがあるし、技術もあるのですが、、自分のイメージだと職人さんの方が背中に一本ピシッとした矜持みたいなものがある気がします。
言葉を間違うと作家さんをディスるみたいな話になってしまうのでアレなのですが、デザインってどうしても使う、買ってくれる人を大なり小なり見るので、そこで矜持との折り合いを考える部分はあると思うんです。(考えない人も実はいるし、意外に密買ではそういう作家さんの作品が多い気がしますが、、)
ただ、職人さんはクライアントの要望に対して忠実に再現することを求められているので、そこにマーケットとかそういう意識がそんなに介在しないんですね。それは別の人たちが考えてる。だから、自分の技術の方に視野が向いていく。結果、プライド=技術になることが多くて、それが背骨になる。そんな構造のような気がしています。
九谷の宮腰さん
九谷焼というのは昔から分業制が進んでいて、基本的に成型、窯焼き、絵付けとパートが分かれています。作品としては絵付けに特徴があるので、絵付けの作家さんの名前で世に出るのがほとんどです。そんな背景の中、今回ご紹介する宮腰徳ニさんは元々九谷焼の窯元の成型の職人さんでした。というか、今でもその仕事は行っています。
ただ、九谷焼全体の生産量は減っていくし、宮腰さんはあとで説明しますけど「型打ち」の器を作るのですが、それが技術レベルが高いために相対的に値段も上がってしまい、結果的に頼む人は少なく。また自分以外の人間でもできる仕事の依頼があったら、年下の人間に振ったりしてて。(なんとなく察することができると思うのですが、商売はそんなにうまくない人です。)
3年前に独立するのですが、そんなスタンスでやっていてたくさんの仕事が来るわけでもないので、自分の名前を冠した作家としての仕事も始めた、というのが大まかな経緯。
と、ここまで書くと価格の高い作家さんなのか?という話になるのですが、そういう訳ではないです。元々の分業制の中ではこういうかたちを何枚いくらで、という納品の仕方になるので、逆に言うと時間を短縮して同じ精度のものを何枚作れるかが勝負でしたし、全ての分業の結果、生み出される九谷焼の絵付けの皿が例えば1万円だとすると、その数割が成型の取り分でした。要はその価格で宮腰さんは売ろうとしているので、通常のクラフトの単一作家さんが作った作品と近い金額帯です。
型打ち
さて、宮腰さんの何がすごいのか?という話ですが。
もちろん狂いなくろくろをひくこともできるのですが、特徴的な技術として「型打ち」という技法を使うことができます。
型打ちとは何か?
まず、素焼き型を用意します。「泥しょう鋳込み」とは違い内側に用いる型です。そこに生乾きのろくろ成型した器をパカッとかぶせます。(このときその石膏型にピタッと合わないとあとでひづみが出るので、同じ形をちゃんとろくろでひくことは最低条件です。)それを手やヘラを使いながら徐々に型に合わせていって結果的に素焼き型の形を器にうつしこみます。
この方法を使うことによって泥しょう鋳込みより薄く(ろくろ成型のため)、圧力鋳込みより軽い(密度が低いため)、だけどろくろ成型では作れないいろいろな形の器を作ることが可能となります。
とりあえず詳しくない僕が感じられること。本当に薄くて軽いんです。複雑な形の洋食器のような雰囲気の器なのに薄くて軽い。結構衝撃的です。Webじゃ伝わりませんが、、
あと、大中小で見てもらうと分かりやすいですが、形が本当にきれい。真円で大中小の角もきれいにそろっています。もちろん型を使っているから、というのもあるのですが、それでもピタッと狂いないこの感じは気分が良いです。
触れてみないと分からないけど
なんというかこっから先の世界って結構難儀で。
この職人さん的なちゃんとしたきれいな形の器って、どんどん機械を使った成型技術が上がっていくことによって、手で作ったものなのか?機械で作ったものなのか?見た目からは分かりづらくなってきています。そのため、現在のクラフトの中で売れるデザインって、ちょっとゆるいものだったりします。手で作られていることが伝わりやすいから。
ただ、それだけになっていってしまうと本当によくなくて。この型打ちの技術自体も業界的にもすごくレアな技術になってしまっていて。こういう技術ってもちろん紙上で言葉で説明は残るのですが、フィーリングというかコツみたいなものってなかなか紙の上では伝わらなくて。結果的に時代に求められないとどんどん減っていってしまう。
どこのクラフト業界も抱えている問題で、これ自体僕らが警鐘ならしても意味が無いし、もうすでにいろいろな場所で同じストーリーは語られていて。なんというか、それを焼き直すつもりはないのですが、単純にこの器きれいな形で薄くて軽いんです。びっくりするほど。
なんかね。こういうのって大事だと思うんですよ。ほんとに。