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導かれた立体

商品番号tk027503
商品名

FLOWER OF WALL

価格

w15-03-wh:¥55,000
w15-05-wh:¥63,800
w15-07-wh:¥62,700
w15-10-wh:¥101,200
w15-03-bk:¥60,500
w15-05-bk:¥68,200
w15-07-bk:¥68,200
w15-10-bk:¥110,000
※全て税込価格

限定数

サイズ

w15-03-wh:
 w440mm×h380mm
 (handle:500mm、750-1050mm)
w15-05-wh:
 w440mm×d110mm×h380mm
 (handle:650-1,050mm)
w15-07-wh:
 w420mm×d110mm×h410mm
 (handle:600-900mm)
w15-10-wh:
 w450mm×d120mm×h450mm
 (handle:580mm)

素材

牛革、パテ、他

支払方法

銀行振込・クレジットカード決済(PayPal)

送料

無料

納期

2ヶ月程度

備考

この商品は返品不可とさせていただきます。
写真の色は実物と異なる場合があります。

バイヤーチバ

新たな旅

「壁を持ち歩く」
そんなコンセプトでカバンを作る男、カガリユウスケ。
彼が打ち出した2015年のコレクションは、これまでの一貫した流れの上にありながら、自身が発表した過去の作品たちをものみ込みかねない力を宿していました。

で、コンセプトというとかっこいいのですが、カガリくんの場合には、もはやその域はとっくに超えてしまっており、もうとにかく「壁」です。

そこに「壁」がある。
街を見回せば、視界のほとんどが壁であるように、当たり前の領域に、カガリくんと壁との蜜月な関係はあります。

でも、そんな両者の関係でさえ、まだ不完全であったのだと気付かせるのが、今回のコレクションでした。

見たことのない立体のカバンへとたどり着いた、カガリユウスケ2015年のコレクション。

w15-03-wh 立方体を壊す、というテーマで幾何学的な変形を考察し、導かれた新しいカバンの立体。

w15-03-bk 黒も新登場。ハンドル部分は、2通りの掛け方があり、立体もそれに合わせて変形する。

これがこの立体の展開図。革1枚でこの立体が作られる。

意外と持ちやすいという評判。モデルは身長157cm。


dot_line.gif

文様から幾何学への旅

壁に施される模様に着目したコレクション。
そのスタートはイスラム様式の建築だったと、カガリくんは語ります。そこに描かれた文様は、“唯一絶対の神”へと人々を導く道しるべ。

そんな神の絶対性を示す図形から出発し、幾何学の世界を旅したカガリくんは、やはりいつもの壁へと帰還します。そこに刻まれているのは、長い時間が作り出した、ヒビ、そして割れ。それもまたひとつの図形だったのだと気付くのです。

さて、ここから長い旅を経て採取された図形が、作品へと変換されるのですが...

今回のコレクションでは、このプロセスにおいて革命的な逆転が起こります。

「壁を持ち歩く」というコンセプトで作られるカガリ作品においては、これまでも壁に擬態化したカバンがいくつも生み出されてきました。しかし、それはいうならば“カバンの壁化”だったのだと、今回のコレクションは気付かせます。


w15-05-wh 細胞の連なりにも似た形状。これは「ボロノイ分割」という、自然界でよく見られるパターンを幾何学化した図形を基にしたもの。分割線で革がたぐられて、立体の構造ができあがる。

w15-05-bk 黒は仕上げのパテに炭酸カルシウムを混ぜたもの。ザラっとした質感の中に、ガラスのように透明で微細な結晶体が見え隠れし、光を乱反射する。

ボロノイ分割


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稜線が立体を作る

では、今回はどんなプロセスが踏まれているのか。
幾何学の世界からカガリくんが持ち帰ったのは、平面を分割する図形の数々。

そんな図形たちは、カガリくんに立体を想起させる力を持っていました。いや、目にした平面図形をつい立体へと変換してしまうのは、カガリくんの脳内で培養された“妄想力”によるものなのかもしれません。

面を分割するために引かれた線。
それは時に展開図のように、立体を組み上げる設計図となり、またある時にはその線を頼りに平面が手繰り寄せられてヒダのようになり、面を立体へと変換します。

もろくて、力を持たない平面は、異なる角度を持つ他の平面と結合するとき、構造となって立体を支える力を持ちます。

それはまるで壁が組み合わされて立体となり、建築になるように。平面である革が立体へと組み上げられ、カバンが作られるのです。

つまり、分割線が稜線へと変換されるとき、そこに立体が生まれる。

しかし変換される前の図形は、本来カバンの設計図ではありません。それがカバンへと強制的に変換される時、新鮮な驚きを感じさせる造形が立ち上がるのです。

イスラム建築に刻まれた文様が、神へと人々の意識を導いたように、壁に刻まれた分割線は、カガリユウスケを新たなカバンの造形へと導きます。


w15-10-wh タイルの目地のように、革を2枚重ね合わせてスリット状の模様を入れた作品。目地は可動部分になる。底の角の部分を折り返すことでマチができるトートバッグ。

w15-10-bk

統合される前の部材。壁に割り付けられた石やタイルのよう。


dot_line.gif

カバンをはみ出す、新たな造形

これまでの作品が、カバン+テクスチャという領域に存在していたのに対して、今回のコレクションではカバンの概念からはみ出るような、新しい造形の誕生がいくつか見られます。

例えば、w15-03や、w15-05はその好例です。
あるいは、一見シンプルなw15-10も平面に近い状態から底面の角を折り返すことで立体になるという、構造的な面白さを感じさせる作品。

w15-03は、「ある日ふと立方体を壊してみたくなった」という、幾何学的なアプローチによって生まれた形。1枚の革だけで作ることを条件に、いくつかの幾何学的な制約を自ら設定して立方体を変形することで、それを新たな立体へと再構築します。

しかも、ハンドルを掛ける位置によって、立体が変形するという仕掛けも組み込まれ、形態の変換というテーマを補強しているようです。

w15-05は「ボロノイ分割」という、自然界でよく見られるパターンを幾何学化した図形によって作られています。それは、ヒビや、細胞の連なり、トンボの羽の模様など、一見不規則に分かれているような図形の成り立ちを解き明かす法則。

まるで壁のヒビが立体的に隆起するように、この分割線で革が手繰られ、有機的な形状の立体構造物が生まれています。

各タイプ共に、白と黒の2色展開。
白はこれまでも紹介してきたように、革を建材のパテで仕上げたものでできています。新登場の黒は、さらに炭酸カルシウムを混ぜたという特殊素材。ザラっとした質感の中に、ガラスのように透明で微細な結晶体が見え隠れし、光を乱反射します。

今回、作品の次元を0.5ほど引き上げ、今後のさらなる進化を期待させるカガリくん。多作な作家ではないですが、次回作が楽しみなだけに、2016年中ぐらいには次のコレクションが発表されるといいなと、祈ってます。

これまでのカガリユウスケ作品は、こちらから。

> 都市型迷彩2017
> 発光する壁
> 壁をまとう
> まさかの巻きもの
> リペア魂 × Dr. カガリ
> 外壁を携えて
> このバック繊細かつ獰猛につき
> 視覚交換作戦
> 外壁を携えて - 100年の壁 -
> 長い旅 - 100年の壁 -


w15-07-wh 実は、今回書いた分割→立体化とは、関係ないのだけれど、こんな使いやすいリュックも作っているよ、ということで。ご愛嬌。

w15-07-bk