映し出す服
商品番号 | tk027803 |
商品名 | MIRROR SEE-THROUGH BLOUSE |
価格 | MIRROR SEE-THROUGH BLOUSE: |
限定数 | 商品購入ページでご確認ください |
サイズ | |
素材 | MIRROR SEE-THROUGH BLOUSE: |
支払方法 | 銀行振込・クレジットカード決済(PayPal) |
送料 | 無料 |
納期 | 2016年1月頃 |
備考 | この商品は返品不可とさせていただきます。 |
バイヤー | チバ |
明滅する服
2015年10月29日、パリのPalais de Tokyoで発表されたANREALAGE(アンリアレイジ)の2016 S/Sコレクション。
「REFLECT」というテーマが選ばれた今回。
そのショーの模様を、はるか遠く離れた東京で、固唾をのんで見守ります。
始まると間もなく、服に現れた鮮烈な変化。
それは今回も驚くべきものでした。
黒一色だった服が、まるで光を発するかのように、まばゆい姿に輝いたと思いきや、次の瞬間、また元の黒に戻り、瞬くように何度も明滅を繰り返します。
その後も次々に現れる服は、どれも黒や白、ストライプなど、シンプルな色や柄を見せながらも、突然明滅を始め、全体が光ったり、あるいは光が細かいチェック柄を浮かび上がらせたりと、瞬時に変化するのです。
さらに中盤に差し掛かる頃に登場したのは、白だけでなく、カラフルな光で模様を描く服。
色や柄はさまざまですが、どれも強烈な光を発しながら、電飾のように明滅しています。
反射材に使われる素材を取り入れて、光を跳ね返す服を作りました。(KALEIDOSCOPE PATCHWORK BLOUSE)
テーマは「REFLECT」。素材が光を反射するだけでなく、服の形も本来は体の中心で反転すべきところが、ずれた位置で反転しています。(REFLECT TRENCH COAT)
こちらは、keisuke kanda(ケイスケカンダ)との師弟競作。アツい“千人針ステッチ”が光ります。(星降るリフレクターステッチドレス)
コレクションの様子はこちらの動画でぜひ見てください。ヘッドフォンやイヤフォンで聞くとバイノーラル音源の立体的な臨場感が体験できます。
自分だけに見える服
今回のコレクションで服に取り入れられたのは、リフレクターと呼ばれる反射材の技術。
実は、ショーで服が光って見えたのは、服自体が発光をしているのではなく、ショー会場でたいたフラッシュの光が反射したものでした。
夜間の交通安全などを目的に、工事現場や自転車用品などに使われることが多いリフレクター。暗闇でも光を強烈に反射して目立っているのを、日常でも目にすることが多いと思います。
光を反射する仕組みは特殊なもので、「再帰性反射」と呼ばれる特性を持っています。
通常、物に当たった光は、その表面で乱反射し、その一部が目に届くことで物が見えます。
それに対して、リフレクター素材の場合には、微小なガラスビーズがレンズのような効果で光を屈折させ、入ってきた方向だけに光を反射します。
そのため、光は拡散せずに跳ね返り、元の光と同じような強さで反射します。だから、フラッシュやヘッドライトのような強い光が当たると、眩しいほどの明るさで光って見えるのです。
つまり、目と物を結ぶ直線上に光源があるときには、物は明るく光って見え、光源の位置がその線上から少しでも外れると反射した光は目に見えない、ということになります。
今回のコレクションの服も、自分の目には明るく光って見えていたとしても、すぐ隣の人には見えていない、ということが起こるのです。
パリのショーでは、その現象を利用するため、観客にスマートフォンでフラッシュをたいて撮影しながら見るように促しました。
すると、フラッシュのすぐ近くにあるスマートフォンのカメラには、明るく光る服が写りますが、目で見ていても服は明るい色には見えません。
すぐ目の前にある服なのに、目で見るのと撮影するのでは全く違った色に見える、という不思議な現象が起こるのです。
MIRROR SEE-THROUGH BLOUSE
MIRROR SEE-THROUGH SKIRT
MIRROR SEE-THROUGH BLOUSE
MIRROR MA-1 BLOUSON
MIRROR MA-1 BLOUSON
多様性の服
しかし、不思議に見えるこの現象、実はとても日常的な光景だともいえます。
世界中から注目を集めるパリコレ。
でも、実物を見ているのは、ほんのわずかな人たちで、ほとんどの人は画像や映像として、モニタや雑誌、テレビ、そしてスマートフォンなどで見ています。
あるいは仮に、実物を見ていたとしても、人によって見え方や感じ方、受け取り方は同じでないばかりか、場合によっては全く逆の受け取り方をするのかもしれません。
それはまさに今回のテーマでもあるREFLECTであり、受け取る側の状態や性格、考え方がそこに投影され、反映されるといえます。
そこには絶対的な価値や尺度など存在せず、むしろすぐ隣にいる人でさえ、全く違ったものとして捕らえるのだということを、この服は視覚化し、提示しているようです。
それは正と誤、虚と実、主と副というような関係ではなく、そこにはただ多様な世界が広がっている。そんなことを気付かされるコレクションでした。
目で見る服と、スマートフォンの画面に映る服。
そこに異なる姿を並べて見せることで、そんな世界を映し出して見せたともいえるのかもしれません。
さらにそれを補完するように、ショーの音楽でもある試みがされました。
サカナクションの山口一郎さんが手がけた音楽は、Aoki Takamasaさんと共同でつくった楽曲に、代々木公園などでフィールドレコーディングをした音源などを乗せて流されました。
音源はバイノーラル録音という技術で記録されたもので、ヘッドフォンで聴くと立体的な臨場感が得られるというもの。
会場では、それぞれにヘッドフォンが配られ、ショー会場にいながら、個々に音を聴くという演出がされたのです。
星降るリフレクターステッチドレス
MIRROR SEE-THROUGH SKIRT
KALEIDOSCOPE PATCHWORK BLOUSE
REFLECT TRENCH COAT
反射する形
このコレクションのテーマであるREFLECTという単語には、光の反射など、いくつかの意味がありますが、発想のきっかけは服の形をデザインするプロセスにあったのだとデザイナーの森永邦彦さんは言います。
世の中のほとんどの服は、左右対称が基本になっているので、デザインをするときにも左右のうち片側半分の形を反転させることで、一着の服が作られるそうです。
だから、デザインの原点となるパターンメイキングの教育においても、反転の軸となる左右の中心が重要であると叩き込まれるのだとか。
通常は体の真ん中を垂直に通る反転の軸。
絶対的だと考えられているその軸を、ずらしたり、さらにそれを反転させたりするとどうなるのか?
そんな試行によって服が作られました。
実は、服が作られるプロセス自体を問い直し、そこから新しい服を生み出そうとするこの思考方法は、かつてANREALAGEの服作りにおいて継続的に取り組まれていた方法です。
大きく注目を集め、ANREALAGEの歴史の中で一つの時代を形成したその方法については、このサイトでも追いかけてきたので、記憶にある方も多いかと思います。
そんな過程を経て、新しい技術や素材の導入へとたどり着いたブランドの進化を、一つのシーズンに凝縮したようなこのコレクション。
そこに音楽などの表現も融合して、さらなる奥行きを感じさせた今回は、新しい時代の始まりを感じさせるコレクションでもありました。
そして森永さんの中では、すでに構想が膨らみつつあるという次回のコレクション。さらなる発展の予感に期待が高まります。
ANREALAGEのこれまでのコレクションなどについては、下のリンクからこれまでの紹介ページと、ANREALAGEのサイトで見られます。こちらも併せてどうぞ。
> 昼の花/夜の花
> ボタンでできた服!?
> 隠された服
> 影と光
> サイズのない服
> 日に咲く服
> 残された美しさ
> 時の断片をまとう服
> 自立する服
> 保留される形
> 見えないカタチ
> ちょうど良い服
> ○ △ □ ?
> 凹 凸
> シルエット
> 乱れ咲き
> ANREALAGEのホームページ
「REFLECT」というテーマは服の形にも。ショーの最初に現れたのは、上下が反転されたスカート。
こちらは、『STAR WARS』とのコラボ作品。
宇宙空間からハイパースペースに突入します。