このバック繊細かつ獰猛につき
商品番号 | tk006205 |
商品名 | WALL(白)M / WALL(白)L |
価格 | WALL(白)M:¥41,800(税込) |
限定数 | WALL(白)M/L : 各限定20点 |
サイズ | WALL(白)M:H35cm×W28cm×D12cm handle70cm |
素材 | レザー(牛革) |
支払方法 | 銀行振込・クレジットカード決済(PayPal) |
送料 | 無料 |
納期 | 約2ヶ月 |
備考 | この商品は返品不可とさせていただきます。 |
バイヤー | 松尾 |
白壁の廃墟空間
バックなのに白い壁面のようである。
レザーに直接建物の外壁用の塗料を塗りたくり?いやいや実はかなり繊細な作業であるが、仕上がりは独特の荒い素材感を生み出している白のWALLシリーズ。
バックの外側なのに、塗料の重ね塗りで厚みを増し陰影さえも生み出している。ただでも分厚いレザーに、外壁塗料の組み合わせでガシッとしたフォルムは、型崩れもせずモノの出し入れがスムーズ。そんな無骨な感じがハマル人にはハマリます。
外壁用の塗料なので当然防水性もある。少々荒い使い方をしてもめげない。しおれない。汚れても拭き取れば良し。経年変化もモノの魅力のうちと思えば納得する?この辺りで好みが分かれそうですね。
バックの側面片側だけに四角いマチがとられ、アクセントになっています。その関係でマチのとられていない反対側には斜めのシャープなエッジが立ち、非対称の造形がお好みの方には得も言われぬバランス感を与えてくれるのです。
尖った方を進行方向に向けると(それが正しい持ち方との作家談)バランスの妙かグングン前に進める様な気がする。尖がり感が気持ち良い。更に構造自体のカッティングとマチの関係でバックを肩から下げた時、身体に添って小脇にレザーがしっくり馴染み、伸ばした腕が丁度バックの底を抱えられるピッタリ感が気持ち良い。
でも良い事ばかりではありません。
建物も外壁から劣化が進むようにこのバックにも経年変化は訪れます。縫い目・切り目の外側から内側に向かって塗料を塗ってゆく関係で、ふちの辺りからカサカサと塗料が剥がれてきます。しかしこのカサカサさえも作家はバックの持ち味だと断言します。
本人曰く「劣化したモルタルの壁とホコリっぽい蛍光灯の白い光で照らされた廃墟のような古い記憶めいた場所」
ん?廃墟を持ち歩く?そんな概念がいままでバックのイメージに存在し得たのか。おそらく左官職人的な感覚でこのバックの外壁(外側)を補修するのでしょう。
実用的な点で付け加えると、バックの内側もある程度はなめして処理が施されているようですが、内張りをしていない関係で、モノを入れると毛羽立ったレザーが擦れて白いカサカサが付着します。色の濃いモノを入れると顕著で、カサカサ具合に神経質な方はちょっと厳しいかもしれません。私個人もこのフォルムに魅せられて愛用していますが、気になるのはその一点。なるほど空間に廃墟を重ねるその感覚、十分に理解しました。私は汚れ等に関しては比較的大らかですが、汚れて困るモノは白いコットンの小袋に小分けして収納するようにしています。気になればバサバサしてスッキリ。兎角雑然としがちな1室タイプのバックの収納法としてはこの使い方がお薦めかもしれません。作家本人は意に介せずそのまま放り込んでいますが、その辺りは個人の感覚にお任せ致します。
しかし裏を返せば一見デメリットと感じるその辺りが、このバックの本当の魅力なのでしょうか。バックを街に持ち出すと本当に生き生きと生気を取り戻すと云うか、独特の存在感を醸し出します。例えば街中で何気なくすすけた壁にもたせ掛けた佇まいが都会の風景と見事に同化して見えるとか。作為を感じさせぬように入念に計算された作家のイメージがこのバックの在り方を創り出している様に感じます。荒さの中にきめ細やかさが混在する、更に一見デメリットに見える使い勝手の良し悪しまで突き放して、持ち手の感覚に訴える移動可能な廃墟空間。
何ともポエティックな感じが致しますが、でも最後は好きに使ってくださいとは作家の談です。
素材というより材料という感じ。無骨です。
尖った先を進行方向に向けて。
バックの外装は壁か?
小さい方が切れ味は鋭い。 左:【WALL/L】 右:【WALL/M】
飼い慣らされない皺くちゃ毒塊
どこまでも皺くちゃで、有機的なと云うより、塊が解けたと表現する方が適切。
先に紹介したWALLシリーズの直線的な形の対極を行く構造。直感的に動物的な生々しさを感じる形状にもかかわらず、作家の繊細な縫製によって形作られた黒のSKINシリーズには、どこか野生が持つ独特の洗練と毒気を感じます。
バックの容量は変形に変形を重ねているので測りようがありませんが、一つ言えるのは書類などデリケートな物の携帯には適さないこと。小物類をゴツゴツと押し込むように入れる感じ。収納するモノに穴倉、隙間など巣を与えてあげる感覚でしょうか。そのうちモノにも帰巣本能が目覚めて忘れ物、落し物も減るかも知れませんね。収納感に独特の癖があるSKINシリーズはモノと巣の関係が整理されれば意外と整理が苦手な方にお薦め出来るかもしれません。
でもこのバック、個人的には女性に使って頂きたい。毒気のあるデザインが女性の懐にある事で更に魅力を増すそんな危うい魅力を秘めたバックなのです。グロいバックからペロッとファンシーな新しめのハンドタオルが覗いている、そんなギャップのある感じが微笑ましくて個人的には好きです。
作家曰く「皮は生き物の皮膚だからこその危うさを内包しているように感じます。しかし動物の皮から革へとナメされ、バックの形になった革にはその危うさが(スーパーで切り売りされているビニールのパック詰めの肉のように)消えてしまい、平坦な印象を感じます。このシリーズでは皮から革になりバックになるにつれて消えてしまった皮のリアリティをなるべくそのままの形でバックに表したいと思います。」
使い易さ度外視のコンセプト偏重に思われるかもしれませんが、作家本人がここ最近公私共に使っているのはこのタイプ。確かに持っている姿をお見かけすると華奢な作家(男)の肩から垂れ下がる(失礼!)バックには何やら得も言われぬ毒気を感じます。
フタ付ショルダー型とトート型の2種類があり、お好みでお選び頂けます。各種様々な毒を持つモノ達ひしめく巣窟を小脇に抱えるのか、引きずるように連れ歩くのか。それは貴方の毒の吐き方によるでしょう。
バックが所持品を規定する。ブランドのロゴではなく素材が本来持つ独自のフォルムで認識される。
カガリの作品には、バックが本来持つ機能としての洗練をも軽く超える唯我独尊を感じます。一切作為的な装飾性を廃して出来上がる詩的な移動空間。毒気の量で判断するとこのバック、カガリ作品の真骨頂ではないでしょうか。でも作品の意味合いを嫌味なく控えめに感じさせるところが彼の上手い所なんだよなぁ。
最初から皺くちゃ。飼い慣らすなんて到底無理。 【SKIN/ショルダー】
バックの概念は超えている。持ち物も再考を。 【SKIN/ショルダー】
空間という塊を持ち歩くのだ。 【SKIN/トート】
持ち手が逆に荷物にならぬように。 左:【SKIN/トート】 右:【SKIN/ショルダー】
東神田の実験計画場
2007年6月東神田にOPENした「pilot program gallery」通称p2gはバック作家のカガリユウスケとニット作家のモキリーで運営しているギャラリー兼アトリエです。作家の実験場との意味合いから「pilot program = 実験計画」の名前が付いています。当初は「CENTRAL EAST TOKYO」というアートイベントの会場として使われていた倉庫物件を会期終了後に賃貸に出すという話から始まった案件。
当初は建築当時の倉庫仕様のままだったのです。オーナーの了承を得て作家と友人達による改装をなんと4ヶ月かけてほぼDIYで行いました。使えなくなったウッドタイルをはがしモルタルを流し込み床を整え、壁・天井を真っ白に塗りつぶし、更には勢い余って什器全てを真っ白に。もう見境がつかなくなり持ち物全てを塗りつぶし、果てにミシンを1台駄目にしたとの逸話も。その苦労を知っている私としてはギャラリーの完成に感慨深いものがありました。まあまあ冷静に時には極端に走る彼らの感覚ですが、空間の完成度を見れば彼らのバランス感覚を垣間見る事が出来ます。アトリエの細部を見れば随所に作品との符号性も見受けられ、空間感覚がそのまま作品に転化されているようで、作品コンセプトの安定性さえ感じます。
アトリエを構えるにあたりエリアの選び方も独特でした。周辺に繊維関連の問屋が多い東神田。素材の仕入れに適し、閉じたシャッターが目立つ商店街の中の路面店というのも彼らの感性を刺激し、今後アーティスト・デザイナーの進出が進むとの読みもあったのでしょう。閉まったシャッターが目立ち始めたエリアに新しい流れを呼び込むのも尖った感覚を持つ彼らのようなデザイナー達なのかもしれません。ファッション関係者の注目も徐々に集まりギャラリー・ショップも増え始めた東神田界隈、今後の発展が見込めそうです。リアルに彼らはエリアに乗り込んだ第一人者、シーンを牽引していくのは間違いないでしょう。
でも当人達は意に介さず今日もゆるーく製作を行っているのです。
※修理のご相談も承ります。まずはメールでお問い合下さい。
密買東京で紹介している他のカガリ作品はこちら。
> 都市型迷彩2017
> 発光する壁
> 壁をまとう
> 導かれた立体
> まさかの巻きもの
> リペア魂 × Dr. カガリ
> 外壁を携えて
> 視覚交換作戦
> 外壁を携えて - 100年の壁 -
> 長い旅 - 100年の壁 -
ギャラリー部分。ほぼDIYです。
アトリエ部分。この感覚がバックにも息づいている。
倉庫を耕して大いなる収穫に辿りつくのだ。
閉じたシャッターに可能性を感じた。街ごと変わるぞ。