肌身を離れず
商品番号 | tk025103 |
商品名 | RANDOM ARAN KNIT BIG TEE |
価格 | RANDOM ARAN KNIT BIG TEE: |
限定数 | - |
サイズ | > サイズ表 |
素材 | RANDOM ARAN KNIT BIG TEE: |
支払方法 | 銀行振込・クレジットカード決済(PayPal) |
送料 | 無料 |
納期 | 2014年7月頃 |
備考 | この商品は返品不可とさせていただきます。 |
バイヤー | チバ |
見えない仕掛け
ぽっかりと、穴の空いたような気分で後にしたショーの会場。
その穴が埋まったのは、それから数日後のことでした。
期待に胸を膨らませつつも、何が起こるのかと、ついつい身構えてしまうANREALAGE(アンリアレイジ)のショー。
少しも見逃してはなるまいと、食い入るように今回も。
でも、そんな緊張をよそに進んで行くショーに、ある予感がよぎります。
もしかすると、このまま終わってしまうのかな?
だとすれば、重大な何かを見落としてるのだろうか?
でも、そうではなかったようです。
実は服たちには、外からは見えないある技術が隠されていたのです。そして、その技術によって、季節を越えた服を作り出したのが、今回のコレクションなのでした。
外からは見えない技術によって作られた、ANREALAGEの2014-15 S/S/A/W COLLECTION「SEASON」
雪の降る冬から始まったショー。巡る季節と共に表現された服たちは...
THERMOGRAPH PRINT A LINE FLAIR SKIRT:¥45,360
色:BLUE、RED
ブランケットのようなチェックの模様はプリントで表現されています。裏地の白い部分がプリントによってコーティングされたアウトラスト素材。
その名はアウトラスト
見えなかったのは無理もなく。
実は今回の服には、アウトラスト(OUTLAST)という素材が使われていて、これはミクロの世界で作用して、温度を一定に保つ働きをするという、すごい素材。
人が快適に感じる温度が32度と言われているそうで。
その32度近辺に表面の温度を保つように、寒い時には熱を放出、暑い時には熱を吸収する働きをするそうです。
そんなアウトラストは、実はピカピカの新素材ということではなく、元々は過酷な宇宙空間での作業用にNASAでも採用されてきた素材。寝具やスポーツウェアでは、これまでも使われているのだとか。
ただし、通常は繊維の中に含まれる形で使われているので、効果はある程度限定的になるそうです。
それが今回は、今までのように繊維になったものだけでなく、表面にアウトラストを直接コーティングした状態のものを裏地として使っている服もあって、その温度調整の効果を最大限に感じることができるようになっています。
「肌身を離れず」
それは、今季のコレクションを表わした、デザイナー森永邦彦さんの言葉。
服自体に、温度を保つ効果を持たせることで、季節を問わず着られる服を作る。それが、今回の「SEASON」で表現された服作りなのでした。
TWEED&HERRINGBONE KNIT JACKET:¥59,400
色:ORANGE、GREEN
素材は布帛(ふはく)ではなく、布帛のように編んだニットだそうです。袖はファスナーを外すと半袖になります。こちらも裏地はアウトラスト・コーティング。
RANDOM ARAN KNIT BIG TEE:¥25,920
色:RED、NAVY、WHITE、ORANGE
アランニットの柄がランダムに組み合わせられたニット。素材はアウトラストのカプセルが入ったニット糸でできています。
新しい季節
日本には素晴らしい四季があります。
そして、四季折々の楽しみと切り離せないのが、衣食住。
でも考えてみると、季節との関係は衣、食、住、それぞれに少しずつ異なるようです。
例えば、食。
3つの中で、最も積極的に四季を楽しむ食は、実は季節の素材を体の中に取り込んでしまうという、とても強い行動から成り立っているとも言えて、弱肉強食と言われるように、季節を制するような強い側面も持っています。そして、だからこそ純粋に楽しむことができる、と言えるのかもしれません。
そして、それとは逆とも言えるのが、住。
体の外側を取り巻いて、暑さ寒さから人を守る住空間には、防御をするような性格が強く、楽しむという側面を持ちつつも、環境と対峙するという性格が強く現れます。
では、衣の場合はどうか?
それは体の一番近く、外部環境とのギリギリの境界を作り出す存在。冬は温かい空気をこぼさず蓄え、夏は熱をいち早く流すように風を取り込む。そのための素材や形が、長い歳月の中で追求されてきました。
それは主に、体の表面にある空気層を、滞留させるのか、流動させるのか、という制御。それが、これまで服が担っていた温度調整の機能だったのでしょう。
どちらかと言えば、住のように環境から身を守る性格の強い、衣の機能。でも、その機能を実現するための形は、いつしか記号化され、デザインや表現としても楽しまれるようになってきます。
それに対して、今回のコレクションで導入されたアウトラストという素材は、空気の層ではなく、素材自体が温度調整の機能を持ちます。
すると何が起こるのか?
これまでの服が持っていた、温度調整のための形は、極端に言えば機能を伴わない記号へと変換されてしまいます。
例えば、温かそうなセーター。
それはアウトラストで作ると、冬温かいだけでなく、夏は涼しいセーターになります。つまり、それは季節を越えて一年中着ることができる服になるのです。
そんな、服と季節との新しい関係。
その幕開けを告げる今回のショーでは、服の形やデザインが、季節感と意図的にずらされることで生まれる、新しい表現が試みられたのです。
THERMOGRAPH RANDOM CHECK TWEED COAT:¥70,200
色:RED、BLUE
ランダムに入り組んだチェック柄が織られた生地と、プリントで表現された千鳥柄の生地で作られたコート。袖はファスナーを外すと半袖になります。裏地はアウトラスト・コーティング。
THERMOGRAPH SNOW KNIT CREW NECK:¥25,920
色:BLUE、RED、BLACK
雪の柄をサーモグラフィーの色で表現したニット。アウトラストのカプセルが入ったニット糸でできています。
肌身を離れず
季節を問わず着られる服。
つまり、お気に入りの一着は、暑い日も寒い日も、年中着て楽しめる服になるのです。
でも一方で、それは先ほどの季節を楽しむという観点で言えば、春には春の、冬には冬の装いを楽しむのがファッションなのだという反論さえ招きかねないような試みでもあります。
しかしそれは、これまでファッションの世界で固定的であった、シーズンと形やデザインとの関係を一度解体して、全く新しい関係性を作り出すことができるという、大きな世界への入り口なのだということを、このコレクションは表現しています。
そしてもうひとつ。
暑い日も寒い日も、着る人に寄り添う一着でありたい。
そんな思いが、「肌身を離れず」と語る森永さんの、もうひとつの意図なのだと思うのです。
そこに込められたのは、ちょっと暑苦しいほどにロマンチックな思い。
実は、あまり語られることはないかもしれませんが、ANREALAGEの服作りの根底にあるのは、服やファッションへの狂おしいまでの愛情なのだと、森永さんと話すたびに感じさせられます。
革新的に、そして劇的に、服の作られる過程や、その形に、鋭く切り込み、近年では新しい技術へと突破口を求めているANREALAGE。
前衛的とも取れるその服作りの根底には、そんなロマンチックな思いと、愛情があるのです。
今回のコレクションのことを考えていたら、森永さんから以前聞いた、服作りを始めた頃の甘酸っぱいエピソードを思い出したのですが、それはここで書くと怒られてしまうので、そっとしまっておきます。
そして今、森永さんが胸に秘めている、大きな構想についても...またこの場でお知らせできることを祈りつつ...
そんなANREALAGEのこれまでのコレクションなどについては、下のリンクからこれまでの紹介ページと、ANREALAGEのサイトで見ることができます。
> 昼の花/夜の花
> リペア魂 × ANREALAGE!!
> ボタンでできた服!?
> サイズのない服
> 日に咲く服
> 残された美しさ
> 時の断片をまとう服
> 自立する服
> 保留される形
> 見えないカタチ
> ちょうど良い服
> ○ △ □ ?
> 凹 凸
> シルエット
> 乱れ咲き
> ANREALAGEのホームページ
THERMOGRAPH SOCKS:¥2,484
色:ORANGE(左上)、YELLOW(右上)、BLUE(左下)、BLACK(右下)
サーモグラフィー柄の靴下。アウトラストのカプセルが入った糸が使われています。
サーモグラフィーの画像。
真冬に外から帰ってきた状態です。上半身はアウトラストでできたシャツを着て、下半身は普通のパンツを履いています。上半身は温度が高い状態に保たれていて、下半身は外気温近くまで冷えているのが一目瞭然です。
ショーの最後に登場したのは、形状記憶合金を使った服。気温の上昇と共に生地がメッシュ状に開いていきます。