隠された服
商品番号 | tk027103 |
商品名 | LIGHT UP KNIT |
価格 | LIGHT UP KNIT:¥36,720 |
限定数 | 商品購入ページでご確認ください |
サイズ | |
素材 | LIGHT UP KNIT: |
支払方法 | 銀行振込・クレジットカード決済(PayPal) |
送料 | 無料 |
納期 | ■2015年8月頃 |
備考 | この商品は返品不可とさせていただきます。 |
バイヤー | チバ |
闇を裂く光
一見すると、真っ黒い姿をした服。
それは、ある種類の光が当たると、その瞬間だけ鮮やかな模様を浮かび上がらせる服です。
誰もが目を疑うような、鮮烈な変化。
不思議としか言いようのないその現象は変わるとか発現するというよりは、むしろ本来の姿を一瞬だけ垣間見せる、というような感覚です。
光は、まるで刃物のように、服を覆っている黒い闇を切り裂き、そこに隠された異次元の世界をあらわにさせます。
しかし闇は、光が過ぎればまた何事もなかったかのように、瞬時に元の黒い姿に服を戻してしまうのです。
驚くのは黒という、もはやそれ以上何色にも染まらないはずの色である服が、鮮やかな色を見せるということ。そしてそれが、ゆるやかな変化ではなく、一切のタイムラグを要さず変わり、そしてまた戻るということです。
発光する服
実は、ANREALAGE(アンリアレイジ)は過去のコレクションにおいても、色が変わる服を発表しています。
それは、日の光を浴びると、見る間に色を変えていく服。そこで用いられたのは、太陽光を受けて分子の結合状態を変化させ、その色を変えるという色素。そのときの変化も思いがけない速さでしたが、それでも完全な発色までには数秒の時間を要しました。
しかし、今回はそれとは全く異なる原理によって、色の変化が起こっています。
物は光を受けると、決まった色の光だけを跳ね返し、残りの色の光を吸収する。それが物の色が見える原理です。
ただし、小学校の図工でも習ったように、黒はそれ以上何色を混ぜても、黒以外の色になることはありません。だから黒い布に何色をプリントしようとも、それは黒い布にしかならないはずなのです。
それは、全ての色の光を吸収してしまう色。なのになぜ黒いこの服は、他の色に変わることができるのでしょうか?
それは、自ら発光する色素を持った服だからです。
今回の服にプリントされている色素は、紫外線を当てると、その光線から受ける高いエネルギーを、光に変えて放射するという物質なのです。つまり、紫外線を受けている間、この色素は自ら発光する、ということです。
紫外線と、この特殊な色素。それは通常どちらも人間の目には見えない存在。だから、ブラックライトのような強い近紫外線を受けた時にしか発光することがないこの色素は、日常生活においては、その色を見ることができません。普段、服の表面には漆黒の闇だけが見えるのです。
起源となるか
闇の中に描かれた絵。
今回の黒い服は、あのラスコー洞窟の壁画を思い出させます。
芸術発生の起源であるとも言われる、その壁画。先史時代の昔、洞窟の奥にある闇の中で儀式を行っていたとされるクロマニョン人たちは、漆黒の世界で自らの内面に浮かぶ幻想と向かい合っていました。
彼らが真っ暗な洞窟の中に描いた絵の瑞々しい躍動感と、明快な描写は、現代に生きる我々の目にも鮮やかな表現として映ります。
しかし暗闇に描かれたそれは、見るための絵ではないという意味で、今日我々が目にする絵画とは大きく異なる存在でもあります。
特別な者だけが入ることを許された暗闇の中で、芸術は生まれ、やがて洞窟を出て人の目に触れ、しだいに日常との距離を縮めていったのでしょう。
もしかすると、今回発表された服も、未来においては洞窟を出て、日常性を手に入れ、我々を楽しませる存在になるのかもしれません。その起源がここだったのだと、後の人々が参照する原点となる存在に。
しかし現時点でそれは、日常生活の中では見ることのできない姿であり、物質的にも日々洗ったりできるようなものではないという点で、洞窟の壁画と同じく、誰にでも体験できるものではないといわざるを得ません。
ただ、その鮮やかで魔術的な変化は、見る者を魅了する力を持っている。そして服という、日常と分かちがたく結びついた物に、そして自分を表現してしまう物に、見た目とは全く別の世界が忍んでいるということもまた、えもいわれぬ高揚感を感じさせます。
まるで暗号のように、巧妙に隠されたもうひとつの世界がそこに潜んでいる。思えば「暗号」というその言葉もまた、闇をメタファーとしていることに気付かされるのです。
今はまだ得体の知れない存在であるこの服。しかし人の心を躍らせるような魔力がそこにあることだけは確かです。
2つの光
パリコレ・デビューだった前回のコレクション。
そこで掲げられたテーマは「SHADOW」でした。
それと呼応するような、今回のテーマ「LIGHT」。
しかし、それは偶然だったとデザイナーの森永邦彦さんは語ります。いろいろなきっかけが重なって、導かれるようにこのテーマにたどり着いたのだと。
そんなコレクションは、2つのパートに分かれて発表されました。
先ほど説明をしたのは、ショーの後半に登場した服。そして前半では、スポットライトを受けたように、黒の中に白い輪郭が現れた服が発表されました。
後半とは異なり、完全なモノトーンが支配する世界。模様や細部の形状が、闇によって覆い隠されたようなデザインと、まるでその闇から服を探そうと光を当てたかのように、明るい輪郭の中で浮かび上がる模様や形状。
暗闇の中で光を当てた細部を見て、その全体像を想像するように、見えているはずの残りの黒い部分にも、そこにはない服の姿を想像しようとしてしまいます。
実際の服の存在を超えて、どこまでも想像を膨らませようとする力が、そこには働くのだろうと。それを楽しんでほしいのだと、森永さん。
そうして見えない世界の中に広がる、無限の風景へと我々をいざなうような、今回のコレクションでした。
ANREALAGEのこれまでのコレクションなどについては、下のリンクからこれまでの紹介ページと、ANREALAGEのサイトでどうぞ。
> 昼の花/夜の花
> ボタンでできた服!?
> 影と光
> サイズのない服
> 日に咲く服
> 残された美しさ
> 時の断片をまとう服
> 自立する服
> 保留される形
> 見えないカタチ
> ちょうど良い服
> ○ △ □ ?
> 凹 凸
> シルエット
> 乱れ咲き
> ANREALAGEのホームページ