暗号化された服
商品番号 | tk028403 |
商品名 | NOISE SILHOUETTE JACKET |
価格 | NOISE SILHOUETTE JACKET: |
限定数 | 商品購入ページでご確認ください |
サイズ | |
素材 | NOISE SILHOUETTE JACKET: |
支払方法 | 銀行振込・クレジットカード決済(PayPal) |
送料 | 無料 |
納期 | 2016年8月頃 |
備考 | この商品は返品不可とさせていただきます。 |
バイヤー | チバ |
静かなノイズ
「NOISE」をテーマにしたANREALAGE(アンリアレイジ)の2016-17 A/Wコレクション。
ノイズとひとことで言っても、さまざまですが。
“ギャー!”と叫ぶようなノイズもあれば、連続する情報・状態が遮られたり他のものが混じったりするのもノイズと呼ばれ、物理的、音響的、意味的、心理的など、いろいろなノイズがあります。
そんな中で今回ANREALAGEが表現するのは、とても静かなノイズです。
懐かしいところでいえば、テレビがアナログ放送だった頃、放送終了後の夜中に流れていた、いわゆる「砂嵐」と呼ばれる、あのノイズ。
白と黒の点がランダムに、そして淡々と明滅するこのタイプは、snow noiseとも呼ばれるそうです。
それが全編を通したモチーフになっているのですが、そこはANREALAGEのコレクション。単にノイズ柄の服ということではありません。
一見すると意味がなく、ランダムな白黒に見えるノイズの中に、ある情報を潜ませている。それが、今回のコレクションなのです。
一見、普通に模様の入った服に見えますが、この模様は特別な条件の下でだけ現れます。
古いテレビの走査線のように、横方向の線が入っている感じが分かるでしょうか? 実は、客席とステージの間を透明のシートが隔てていて、そのシートに黒い線の縞が入っています。
上のように服に模様が現れるのは、透明なシートと近づいたときだけ。離れているときには、このようにノイズ模様の服です。
CODED NOISE LAYERED COATには、千鳥柄が施されています。
ショーの動画。フルスクリーンで見ると、隠された模様が現れる様子が、鮮明に見えます。
暗号化されたデザイン
パリコレに発表の場を移して4回目となるコレクション。
今回は、ちょっと見たことのないような仕掛けが服に施されていました。
それが、「視覚復号型秘密分散法」という、聞きなれない技術によって作られたデザインです。
これは左下のように、二つの模様を重ね合わせて一つの図形にする方法。もともとは軍事用の暗号として考案された技術だそうです。
一見すると意味のないノイズに見える模様。それはある図形を基に生成されていて、もう一つのノイズを重ねることでその元の図形が浮かび上がる、というのがこの技法です。
つまり、
ノイズ×ノイズ=意味のある図形
となるという、驚きの技術。
今回のコレクションではこの原理を応用。ノイズ柄の服に、黒の縞模様が施された透明なシートを重ねると、千鳥柄や、市松模様、さらに花柄まで、さまざまな図形が浮かび上がる、というデザインになっているのです。
図形を暗号化し、ノイズへと変換する作業は、プログラムによって実現。今回はアーティストでありプログラマでもある、QOSMOの浦川 通さんとの協業により模様のデザインが生成されました。
ノイズ自体は静かで単調なもの。
しかし、そこにシートを重ねることで、服は全く別の模様へと変化します。
それは、まさしく「暗号」という通り、特定の状況下、特定の人にだけ、隠された意味やデザインをあらわにする服なのです。
(上から1、2番目)CODED NOISE LAYERED DRESS
(下2点)水玉や花柄も暗号化され、生地に潜んでいます。
「視覚復号型秘密分散法」による暗号化。
上の2つのノイズ画像を、ピッタリと重ね合わせると、模様が現れます。ちょうど重なったとき以外はノイズ状態になっています。
暗号化の障壁
今回試みられたのは、黒い縞の入った透明なアウターや、ポンチョを重ねて着ることにより、隠された模様が浮かび上がる、という仕掛け。
実は、本来の「視覚復号型秘密分散法」では、二つのノイズ画像を重ねて図形を表示させます。しかし、布でそれを実現するのは、かなり困難を極めるようで。
なぜなら、布はそのしなやかさゆえに、模様などを正確な位置、形に保つのが難しいからです。
ノイズとノイズを掛け合わせるには、小さな点どうしを正確に重ね合わせる必要があります。これを布×布で実現しようとしたけれど、どうしてもできなかった... と試作の数々を手に、悔しそうに語るデザイナーの森永邦彦さん。
そこで片方をストライプに変更。単純化することで、何とか隠された模様を浮かび上がらせることに成功します。
しかし、それでも線の間隔は0.05mm単位で調整を施すなど、いくつもの困難を乗り越える必要があったのだといいます。
NOISE SILHOUETTE JEAN JACKET(GRAY)
NOISE SILHOUETTE SKIRT(BLACK)
NOISE SILHOUETTE JACKET(BLACK)
NOISE SILHOUETTE SKIRT(GRAY)
NOISE SILHOUETTE JACKET(BLACK)
NOISE SILHOUETTE JEAN JACKET(GRAY)
新しいフェーズへ
テクノロジーとの融合でその名を馳せるANREALAGE。
しかし、それは手段であり、目的でないのはもちろんのこと。加えて、パリコレ進出の前後を境に、新たなフェーズの到来をも感じさせるのが、最近のコレクションです。
ANREALAGEの進化には、これまで大きく3つの段階がありました。
「神は細部に宿る」をテーマに、圧倒的な手仕事の量で服のあり方を変えようとした最初期。
その後に迎えた“造形の時代”では、服の形が生まれるプロセスに潜む固定概念を疑い、服が服として成立することの意味を問い直します。
さらにテクノロジーとの融合により、服の存在意義そのものをも再定義するような時期を経て、満を持してパリへと発表の場を移すのです。
そして最近のコレクションに見て取れること。
それは、服を“着る”ことの意味自体を変容させようとする意思です。
新しいレイヤーをまとわせるように、服に仕掛けを施し、それによって単純な見た目や形以上の意味を、そこに忍ばせるような服作り。
生み出された服は、コミュニケーションのあり方や、アイデンティティの表現まで変えてしまうような可能性を感じさせ、服との新たな関係を期待させます。
今回のコレクションにおいても、その傾向は鮮明。暗号化され、ノイズの中に巧妙に埋め込まれた服の柄。見え隠れするその姿を、いつ誰に、そしてどのように見せるのか。それをコントロールするのは、自分の意思か、はたまた外部の要因なのか。
革新的であるがゆえに、危うくもあるその存在は、まるで服を物質から現象へと変位させようとするかのようです。
これまでにいくつかの時期を経て、ANREALAGEは服作りを変化させてきました。
しかし同時に、方向性が変わっても常に貫かれてきたものがあります。それは、リスクを省みずに新しい世界を追い求める姿勢です。
今回も、実現したいものに近づく方法がなかなか見つからず、もがき苦しんだと語る森永さん。思い描くものが実現できるという確証もないまま、毎シーズン新しい方法に果敢に挑む。その強さこそがANREALAGEの本質だといえるのです。
そんなANREALAGEの過去のコレクションは、こちらで紹介しています。そして、ANREALAGEのホームページでもこれまでの全コレクションが見られます。
> 映し出す服
> 隠された服
> 影と光
> リペア魂 × ANREALAGE!!
> ボタンでできた服!?
> 肌身を離れず
> サイズのない服
> 日に咲く服
> 残された美しさ
> 時の断片をまとう服
> 自立する服
> 保留される形
> 見えないカタチ
> ちょうど良い服
> ○ △ □ ?
> 凹 凸
> シルエット
> 乱れ咲き
> 昼の花/夜の花
NOISE SILHOUETTE SKIRT(上)GRAY、(下)BLACK
CODED NOISE LAYERED COAT
CODED NOISE LAYERED DRESS